「ウソがわかったときに、本当に私、腹立たしくて。その日はそのまま家に帰ってきちゃったんです。もう別れるつもりでいました。だけど、その夜、すごくたくさんのLINEが来て、そこには、『もう1度だけ会って、謝らせてほしいって』って書かれていて、結局、翌日にはまた会ってしまったんです」
会社帰りに、まさゆきがあゆみの家に来た。
「彼は私をだました! それがわかっていても、顔を見ちゃうと好きな気持ちが抑えきれなくて。目を真っ赤にしながら、『ごめんなさい』って謝られたら、“やっぱりこの人と、一緒にいたいな“って、思っちゃったんですよね」
そして、よりを戻してしまった。
心のどこかに「もしも」の期待があった
心のどこかに、もしまさゆきが離婚したら、自分が再婚できるかもしれないという淡い期待もあった。さらには不倫オンリーではなくほかにも目を向け、まさゆきと付き合いながら婚活も続け、彼を越える相手が出てきたらそちらを選べばいいと、自分に都合のいい考えを巡らせていた。
「友達に誘われれば合コンに行ったり、婚活パーティに参加したりしていましたが、彼以上の人にはなかなか出会えませんでした」
そうこうしているうちに2年半が過ぎてしまった。
では、あゆみはそのズルズルと続いていた不倫から、どうやって抜け出すことができたのか?
「彼が本社に戻ることになったんです。子会社の責任者を任されていたので、本社では役職が上がって出世するようでした。本社に戻る話が決まってから、彼の態度はあからさまに冷たくなっていきました」
そう、あゆみは東京にいるときだけの相手だったのだ。
「離婚なんて、はなから考えていなかった。本社で出世して、家族と仲良く暮らすようでした。なぜ小さな子どもがいるのに単身赴任をしていたかといえば、有名私立に子どもが通っていたから引っ越せなかっただけ。奥さんとの仲がどうなっていたかはわからないけれど、子どもの教育には熱心な父親だったんでしょうね」
そして、結婚していることがバレて、あゆみに別れを切り出されたときには、しつこいほどにLINEをよこして追いかけてきたのに、本社に帰ってからはぴたりと来なくなった。
逆に諦めきれなかったのはあゆみのほうで、彼にLINEを送り続けた。最初は簡単な返信が来ていたが、そのうち既読にもならなくなった。おそらくあゆみのLINEをブロックしたのだろう。
ここまで話した後、あゆみはしみじみと言った。
「35歳半ばからの2年半って大きいですよね。今考えると、なんてバカな時間を過ごしてしまったんだろうと思うんですよ。この2年半って、20代の5年くらいに相当する」
あゆみは30歳くらいから、アプリや婚活パーティでの婚活を始めていたが、どこか真剣味がなくて、気づいたら不倫にどっぷりハマっていた。
「彼が東京を離れて連絡が来なくなったときには、本当に悲しくて、ずっと泣いてたんですよ。でも、日にち薬とはよくいったもので、だんだん冷静になっていって、“これは神様が人生を軌道修正するために与えてくれたことなんだな“と思えるようになったんです」
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