データ「集めて分析」だけの人が知らない真の価値 観戦チケットの価格設定にもデータサイエンス
“何をすべきか”というデータサイエンスは、消費者に身近なところでも活用が始まっている。例えば、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店で取り組みが進む、AIを活用した自動発注の仕組みだ。
コンビニエンスストアで販売されているペットボトルのお茶を題材に考えてみよう。先週までの販売状況から、来週どれぐらい売れるかを予測できたとしよう。しかし、予測数量がそのまま発注量になるわけではない。店舗の在庫状況、発注の単位、店舗バックヤードの収容力など、ビジネス上のさまざまな制約条件を加味しながら発注しなければならない。
販売数量を的確に予測することも重要ではあるが、それを踏まえて商品をいくつ発注すべきかまで考えることがデータサイエンスに求められるようになってきている。「AI発注」と呼ばれる取り組みだ。分析・予測するだけではなく、具体的な発注量を決める“処方箋”まで作成することが求められるようになってきているのだ。
さらに、「AI発注」の真の目的は、個別商品の売上を最大化することではない。例えば、よく売れるからといってドリンクコーナーに日本茶のペットボトルだけ置いてしまうと、売り場に魅力がなくなり、かえって客足が減ってしまう。AI発注では、単にその商品の売上を最大化することではなく、ドリンクカテゴリ全体や小売店全体の売上を最大化するような、バランスの取れた発注を行うことが求められる。
一般的に売り場には、「売り筋」「売れ筋」「見せ筋」と呼ばれる品揃え構成の考え方がある。「売り筋」はその小売店で力を入れて売っている商品、「売れ筋」は消費者ニーズが高くよく売れている商品、「見せ筋」は主に消費者の関心を引くために取り扱っている商品のことだ。AI発注には、これらの商品のバランスを考えて、店舗の売上を最大化するように発注することが求められ、そのためには膨大な計算が必要になるのだ。
「過去を知る」だけではもう古い
ビジネスの世界において、データサイエンスは、以前は“過去を知る”ためのものであった。それがAIブームなどにより“未来を変える”ためのものになった。「これから何が起こるのか?」を推測するための分析活動が中心になった。現在はさらに先に進み“何をすべきか”までを提示するものとなってきている。予測だけで終わっていては、ビジネスで大きなメリットを生み出せないが、“何をすべきか”という処方箋まで用意できれば、ビジネスにおけるデータサイエンスの価値は大きく高まる。
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