Netflixとテレビ「製作側が経験した」決定的な差 「深夜食堂」を通し映像作品の今後を考えてみた
――第4シーズンからネットフリックスです
遠藤氏:DVDの売り上げが、特にレンタルは右肩下がり。以前から、中国や韓国ではパッケージではなく配信でした。だから、僕の方からネトフリに売り込みに出向きました。アジア圏にも人気のコンテンツだとPRして。すぐに購入してもらえました。
――MBSもOKしたのですか
遠藤氏:いえいえ、もめました。その当時は黒船が来たといった感じで、放送局は警戒していましたから。ネトフリの資金があれば製作委員会方式でお金を集める必要もありません。ただ、これまでの関係や、原作者サイドがこれまでのファンも大切にして欲しいというので、配信から3年後には地上波でも放送できる契約にしました。
――第5シーズンもできたのは数字がよかった
遠藤氏:いつどこで誰が見たという詳細なデータはあるはずですが、製作側には開示されません。「割といいです」みたいな感じで。悪ければ次はないのでしょうが。ただ、ネトフリは中国でのサービスがないので、ワールドワイドの契約から中国を除外してもらい、中国のビリビリという配信サービスと契約を結びました。アジア圏で人気の作品なので中国で見られないのはもったいないですから。
ネットフリックスになって変わったこと
――ネトフリは製作面での自由があると聞きます
遠藤氏:テレビでも後に放送するのでそんなに攻める作品でもありません。ただ、地上波はコンプラが厳しい。マスターも最初のころは厨房(ちゅうぼう)でたばこを吸っていたんですがね。「全裸監督」の武監督に聞いたら、こんなこともできるのかと驚いたと言ってました。
――今後はどうすみ分けされるのでしょう
遠藤氏:スクリーンで見る映画はなくならないでしょうし、映画も最終的には配信に流します。当初、ネトフリは配信権だけを持っていたのですが、ディズニーが自身の配信事業をやるために作品をすべて引き揚げたことをきっかけに、「全裸監督」のようなすべての権利をもつオウンドの作品に力を入れています。
――ネットフリックスになって変わったことは
遠藤氏:予算ですね。最初は、ギャラが安くてすみませんと謝ってばかりでしたが、それも少なくなりました。製作現場は仕事がしんどく、なり手も減っている。特に助監督不足は深刻です。だから、製作委員会での深夜ドラマはもうやろうとは思いません。低予算だと、働くスタッフも仕事じゃない。自主映画ではないので。予算があっていい環境で作れるのは幸せです。
――ネトフリの拡大で作品の傾向も変わっていきますか
遠藤氏:配信会社へのコンテンツ販売を仲介するマイシアターDDという会社があります。最近は製作にも乗り出して、配信で見られやすいものを積極的に扱っています。ビデオが出始めのころ、借りられやすい作品としてVシネが作られ、やくざものが人気でした。