「成果主義で評価する」親が子どもを潰す納得理由 子どもにはその大人の常識は通じない

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これは、ご褒美目当ての場合に限った話ではありません。成績を上げたい。クラスアップ(上級クラスに入ること)したい。志望校に合格したい。目標が何であれ同じです。多くの子どもは目標があっても、それを達成するために何をしたらいいかわかりません。だから、何もできないまま時間ばかりが過ぎていくことになります。

仕事ができる親御さんは「目標を達成するために、何をすべきか考える」ということを自分が当たり前にできてしまうために、「子どももできるはずだ」と思い込んでしまうことがあります。そして、それを考えないのは「やる気がないから」「サボっているから」と判断してしまい、やる気を出すように子どもを追い込んでしまいます。

これは子どもをツブす原因となるので要注意です。

わが子は「部下」ではない

仕事であれば、極論、部下は「代替可能」です。「何をすべきか考える能力がない部下は切り捨てていく」という方針は、会社の利益を最大化するための戦略として選択肢の1つです。能力のある社員だけが選別され、生き残っていく成果主義のシステムは、うまく機能する場面もあるでしょう。

でも、わが子はそうではありません。そうですよね?

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わが子を成績アップに導きたければ、子どもに寄り添いながら、子どもに勉強のやり方から教えていくことを心がけることが必要です。まずは「能力の不足」と「やる気」の問題を分けて考えることから始めてください。とくに、子どもが相手の場合には、ほとんどの問題は「能力の不足なのだ」と思っておきましょう。

初めのうちは、目標を達成するために「何を」「どれくらい」「いつ」やるのか、考えるのを手伝ってあげてください。そして徐々に手放して、本人だけで考えられるようにしていきましょう。このようなトレーニングをして、能力を身につけさせてあげればいいのです。

以上、仕事ができる親が陥りがちな子育ての落とし穴でした。自分の常識や感覚を子どもに押しつけると失敗します。その自分の感覚や常識は、「今」「大人の自分が」できることで、「子どもが」できることではないからです。

成果を出すための「PDCA」的な考え方や、効率のいい学習法などは、年齢を問わず普遍的です。それを教えてあげることは、とてもいいことです。ただ、身につけさせるためには手厚いフォローが必要です。しっかりフォローしてあげてください。そうすれば、お子さんの能力を引き出し、成績アップや受験の合格に導いてあげられますよ。

(※)The Power and Pitfalls of Education Incentives
菊池 洋匡 中学受験「伸学会」代表、算数オリンピック銀メダリスト

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きくち ひろただ / Hirotada Kikuchi

開成中学校・高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。10年間の塾講師歴を経て、2014年に中学受験専門塾「伸学会」を自由が丘に開校し、現在は目黒・中野を合わせて3教室に加え、オンライン指導も展開。最新の教育心理学の裏付けがある授業は、特に理系の父母からの支持が厚い。指導理念と指導法はメルマガ(登録者約8000人)とYouTube(登録者約46000人)でも配信。生徒の9割以上は口コミによる友人紹介と、メルマガやYouTubeを見ているファンの中から集まっている。著書に『小学生の勉強は習慣が9割』(SBクリエイティブ)などがある。

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