決算書読み解いてわかる「しまむらの商売」の裏側 ファーストリテイリングと比較して見えたこと

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なぜ、このような原価率の違いが生じているのでしょうか。そのカギは、両社のビジネスモデルの違いにあります。図4を見てください。

■図4

(出所)『見るだけで「儲かるビジネスモデル」までわかる 決算書の比較図鑑』

FRが採用しているのは、SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel、製造小売りとも呼ばれます)型といわれるビジネスモデルで、自社が企画・生産から関与して販売まで行う形態になっています。

SPA型の場合、自社のオリジナリティーを前面に押し出した製品企画が可能になります。そのためFRでは、機能性などの強みを訴求する製品をつくり、しかも原価率を低く抑える(高い粗利益率を確保する)ことができているのです。

しまむらは仕入れ型ビジネスモデル

一方、しまむらでは卸売業者から商品を仕入れて販売する仕入れ型のビジネスモデルを採用しています。仕入れ型の場合、SPA型に比べて卸売業者に対して支払うマージンが必要になるため、原価率が高くなる傾向があります。したがって、しまむらの場合には薄利多売のビジネスモデルを構築する必要があります。

それを実現する仕組みの1つが、「売り切れ御免」のポリシーと高度な店舗間物流の仕組みです。在庫で売れ残りが発生すると、店舗では値引きをして売り切らなければなりませんが、こうした売価の変更は収益性を圧迫するため、売り切った商品については追加発注を行わない方針としています。

また、ある店舗で在庫が切れた商品に関しては、ほかの在庫がある店舗から取り寄せることができるよう、きめ細かな自社物流網を構築しています。全社としての在庫を適正化し、なるべく値引きを行わずに商品を売り切れるようにしているのです。

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