全身麻酔「世界初成功は江戸時代の日本人」の凄さ 命がけで開発に挑んだ「華岡青洲」夫婦の物語
倒れそうなほど疲労困憊
「うぎゃあ!うぐぐ……痛いっ!痛い!」
手術の部屋から患者の悲鳴があがる。つい、さきほど血を流しながら、運ばれてきたばかりの患者だ。
「長くなるかしら……」
加恵は何もできないもどかしさを覚えながらも、手術が無事に終わることを祈るばかりだった。しばらくして、夫の華岡青洲(はなおか・せいしゅう、江戸時代後期の外科医)が部屋から出てきた。汗びっしょりで、今にも倒れそうなほど疲労困憊しており、うつむいたまま、居間へと入っていく。
「お疲れさまでした」
そう声をかけても、加恵が出したお茶も飲まずに、青洲はただ腕組みをして、目をつぶっている。
「手術はうまくいきませんでしたか」
青洲はようやく加恵がいることに気づいたような顔をして、「いや、手術はなんとかうまくいった」と言うと、少し頬を緩めたが、すぐに難しい顔をした。


















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