「くすぶり中年」錦鯉、50歳&43歳がいま思うこと 「親が聞いたらたぶん泣く」時代を超えて

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先に売れた年下芸人たちとの関係も…

芸歴こそ長い彼らだが、テレビに出始めてからはまだ日が浅い。つまり、若手ばかりの中に、飛び抜けて年齢の高い遅咲き芸人2人が席に着くひな壇が出来上がったりするのだ。

長谷川:パーパーのあいなぷぅのご両親が僕と同い年で、四千頭身・後藤(拓実)くんのお母さんが僕より年下です。だから、自分の娘、息子がテレビで活躍してる感覚というか。

ひな壇の中だけの話ならまだいい。場を仕切るMCより長谷川のほうが年齢も芸歴も上という状況がざらなのだ。

長谷川:サンドウィッチマンや千鳥やオードリーって、僕より後輩なんですよ。でも、テレビに出てるのは向こうのほうが先。彼らは僕の方が先輩で年齢も上ってわかってるから“さん付け”と敬語で接してくれるんですけど、それがややこしくて。「なんだよ、長谷川!」って呼び捨てにしてくれたほうが、僕としてはやりやすいんです。

『週刊女性』のインタビューを受ける錦鯉(写真:週刊女性PRIME)

それ以上に、長谷川からMCに話しかけるときが難しいらしい。

長谷川サンドの2人は「いえいえ、先輩ですから」って言ってくれるんですけど、だからって「伊達、お前さあ」なんて行けなくないですか? どうしたらいいのかなと思って。ザキヤマ(山崎弘也)さんには「“くん付け”で行けばいいんじゃない?」ってアドバイスされました。ジャニーズみたいな感じで「大悟くん!」「ノブくん!」みたいな。

また、良くも悪くも錦鯉の個性になっているのは、歳を重ねたぶん、それなりにわきまえた大人の考え方も持っているところだ。

長谷川:今、レギュラー番組がないので、レギュラーを持ちたいと思ってるんです。トークからコントから身体を張った笑いから。冠番組を持って、とんねるずさん、ダウンタウンさん、ナインティナインさんがやってきたようなバラエティーをやってみたいなと思います。

渡辺僕はレギュラーはさすがにおこがましいと思うんですよ。こんな、おじさんがね(苦笑)。でも、テレビの仕事はすごく面白いんで続けていきたいなあと。それも、やっぱりお笑いの番組に出続けたいですね。

ツッコミ担当・渡辺隆(写真:週刊女性PRIME)

長谷川:僕、役者もやりたいです。

渡辺:僕は全然、役者やりたいと思わないですよ(苦笑)。

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2人に共通する目標は漫才のトップになるべく『M-1』に挑戦し続け、優勝を果たすこと。大会の規約に則れば、長谷川は56歳になるまで『M-1』への出場が可能である。

長谷川:こないだ、新庄(剛志)さんが日ハムの監督になりましたけど、その前にもトライアウトを受けたじゃないですか。僕、同学年なんです。新庄さんも僕も同年代の方に夢を与えるじゃないですけど……

渡辺:新庄さんとアンタ、全然違うから! 何を同列で並べてんだよ(笑)。

『M-1グランプリ』を立ち上げた島田紳助は、大会の趣旨を「芸人にお笑いを諦めさせるため」と説明していた。そんな『M-1グランプリ』で“中年の星”になる錦鯉の輝き方は異端。これもまた、ひとつの美学である。

(取材・文/寺西ジャジューカ 撮影/北村史成)

【長谷川雅紀プロフィール】
はせがわ・まさのり 1971年、北海道生まれ。吉本興業札幌事務所1期。94年「まさまさきのり」でデビュー。解散後、「マッサジル」への改名を経て、2012年「錦鯉」結成。『M-1グランプリ2020』で第4位に輝き、ブレイクする。
【渡辺隆プロフィール】
わたなべ・たかし 1978年、東京都生まれ。東京NSC5期生。2001年「ガスマスク」でデビュー。解散後、「桜前線」を経て長谷川雅紀と2012年「錦鯉」結成。『M-1グランプリ2020』で第4位に輝き、ブレイクする。
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