「くすぶり中年」錦鯉、50歳&43歳がいま思うこと 「親が聞いたらたぶん泣く」時代を超えて
渡辺:でも、自分たちで苦労とは捉えてなかったです。まあ、「ネタ作るの面倒くせえな」と思うことはありましたけど(笑)。もう、ネタの台本を書いていたら間に合わないので、「ああやって、こうやって」と口伝えでアイデアを伝える形になっていきましたね。
保険証がなくて7000円支払うはめに
『くすぶり中年の~』を読むと、印象的な記述がある。
「ブレイクするまでの49年間、生きていてよかったと思ったことは一度もなかった。街中を歩いていても、いつも下を向いて、地面や床しか見ていなかった」と、長谷川が綴っているのだ。
長谷川:実際に生きててよかったと思ったことはなかったですよ。結婚もしてないし、子どももいないし、何もいいことがなかったです。でも、これを親が聞いたらたぶん泣くなと思って。なんか、ちょっと申し訳ないな。
渡辺:いいじゃん、別に(笑)。だって、そうだったんだからしょうがないじゃん。
特に長谷川を悩ませたのは、借金だ。『くすぶり中年の~』の中にも、彼のお金にまつわるエピソードは多数出てくる。「『M−1グランプリ2020』に出るまでお母さんにお金を無心していた」「携帯代が未納だったので、弟のデスクトップパソコンを勝手に質に入れた」「当時の相方と一緒にしていた口座から勝手に40万円を引き出し、スロットで全部スッた」など……。
渡辺:犯罪ですからね。
長谷川:いや、でもちゃんと返したから! お金も返したし、パソコンも返したし!
お金の問題は長谷川を長く悩ませた。返済するため、また別の人からお金を借りる自転車操業の日々。返済日が近付くと、さすがに精神的に病んだ。
長谷川:でも、ライブの舞台に立ったらバカなギャグを言って現実逃避できたんです。だから、よかったですよ。精神を保てたというか。そのときはイヤなことを忘れられるんですね。
渡辺:お客さんにしたらたまったもんじゃないですよね。ふざけんなって話で(笑)。
でも、懲りない。長谷川にはギャンブル癖があったのだ。
長谷川:夜10時から朝8時まで牛丼屋のバイトに行って、そのまま家に帰んないでパチンコ屋行って、ごはん食べずにずーっと丸1日打ってて。で、また夜になってバイト行って……っていう生活を繰り返してたんです。そしたら、ご飯にお玉でお肉を盛る途中で寝て、お客さんに注意されたり。
渡辺:それ、お客さんはなんて注意するの?
長谷川:「寝てるよ」って。深夜じゃなく朝でも寝たりしてたんです。だから、バイトの先輩に「お前、ナルコレプシー(時と場所に関係なく、突然強い眠気に襲われる病気)だな。病院行け!」って言われて。病院へ行って事情を話したら「それ、ナルコレプシーじゃないね。単純に寝てないからだ」って。別に薬をもらうわけでもなく、「ちゃんとした生活をして、寝てください」って言われただけ。で、当時保険証を持ってなかったから、10分ぐらい「寝られない」って話をしただけで7000円取られましたよ!
渡辺:それ、持ってないのが悪いから(笑)。