絶好調ワークマンが「職人用品を店の右に置く」訳 大半の店舗が年商1億円超えるレイアウトの秘密

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結果として、最大限の効果が得られたわけではなかったが、一定以上、それも想像以上の成果が出せている。効果がもうひとつだった店舗はあっても、多くの店舗の売り上げは大きく伸ばすことができたのだ。売り上げを2倍以上にできた店舗も出てきた。

地方の店舗で職人さんの需要が減り続けている店舗は、今後の挽回が難しくなるので、早めに一般客を増やしておきたかったという考えもあった。その意味でいってもこれをやった意味は大きかった。投資効率ばかりを優先させず、救済を考えて動いたことで加盟店の信頼を得られた部分もあったはずだ。

こうした際に、何を優先していくべきかということで社内の意見が割れることはなかった。みんなが同じ方向を見ていて、利益を求めるよりも脱落者をなくそうとするのがワークマンの企業風土だ。

業態転換を無理強いはしない

現在もなお、各地の店舗でワークマンプラスへの業態転換を進めている。そうしているなかでは、「忙しくなりすぎてしまった」という声が店長から聞かれるケースも出てきている。想定の範囲を超えた来店者数になることもあるからだ。

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こうした場合、本部でもできるだけサポートしているが、やはりスタッフを増やすなどしてなんとか対応してもらうことも多々ある。

口ではつらいように話していても、厳しい時期を経験していた店長であれば、その表情は明るい。オーナーである以上、売れないよりは売れたほうがいいのは当然だからだ。

現時点で全国のすべての店長がワークマンプラスへの業態転換を望んでいるのかといえば、決してそういうわけではない。

プロ比率が高い売り上げ上位店舗に対して「ワークマンプラスに変えてはどうか」と持ちかけてみても、いい反応をもらえないこともある。そういう場合には当然、無理強いはしない。店長が納得したうえで業態転換するのでなければ意味がないからだ。

前回の記事:ワークマンの加盟店は「夫婦で経営が条件」のなぜ

土屋 哲雄 ワークマン専務

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つちや てつお / Tetsuo Tsuchiya

東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て三井物産デジタル社長に就任。本社経営企画室次長、三井情報取締役。2012年ワークマンに入社。2019年より現任。ワークマン店は作業服市場を取り尽くす勢いのため、2018年に新業態店として「WORKMAN Plus」を仕掛けて大ヒット。20年に女性目線の「#ワークマン女子」店を立ち上げ、10年で400店舗の出店をめざし快進撃中。著書に『ワークマン式「しない経営」』(ダイヤモンド社)がある。

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