私鉄電気機関車、地方経済支えた「力持ち」の記憶 貴重な「古典機」がローカルの貨物輸送に活躍
最近は鉄道ファンの間で貨物列車を牽引する機関車に注目が集まり、今や希少となった国鉄時代のEF66形、EF64形などの電気機関車が「撮り鉄」たちの主な被写体となっているようである。
だが、私鉄の機関車に目を向けるファンは少ないようだ。筆者に言わせれば私鉄の機関車こそ、戦前、戦後を通じて地域の貨物輸送や鉱山輸送などに活躍し、地方経済を陰で支えてきた存在だ。
私鉄の貨物輸送は国鉄末期に大半が廃止され、残った鉄道も規模縮小や廃線などで機関車の姿を見ることは少なくなったが、まだ活躍を続けている例もある。そこで、筆者が長年の取材において目撃、記録した私鉄の機関車、とくに今回は電気機関車を、写真とともに今一度振り返ってみたい。
現役の私鉄電気機関車はどこに?
我が国における一番古い電気機関車は明治中期ごろに足尾銅山で使用されたといわれているが、諸説あり確証はない。いずれにしても国内初の電機は鉱山の専用鉄道であることは確かだ。その後、国鉄だけでなく各地の私鉄で電気機関車が活躍した。
まずは現役の主な私鉄電機を取り上げてみよう。首都圏で私鉄電機の活躍が見られる鉄道といえば秩父鉄道(埼玉県)だ。秩父・武甲山の麓の秩父セメント(現・太平洋セメント)の鉱山から秩父鉄道本線を経由して熊谷方面への石灰を運ぶための列車で、三輪鉱山(武甲山の鉱山のひとつ)から影森駅を経て本線上を走行する。活躍するのは、日立製作所が私鉄や専用線用に製造したデキ100形など3形式14両のデッキ付き箱型電機。貨物輸送のほか、観光用イベント列車を牽引することもある。
SL運転で知られる大井川鉄道(静岡県)も電気機関車が現役だ。本線電化当時からのE10形、大阪窯業セメント(現・住友大阪セメント)の専用線で使われていたED500形電気機関車が長らくSL列車の補機に活躍してきた。近年、元西武鉄道のE31形3両(E32・E33・E34)が投入され、こちらも補助機関車に使われている。また、忘れてはならないのが、日本唯一のアプト式鉄道である井川線のED90形であろう。
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