私鉄電気機関車、地方経済支えた「力持ち」の記憶 貴重な「古典機」がローカルの貨物輸送に活躍

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西武で筆者好みの電機は、スイスのブラウンボベリ社製のE51形(1923年・元国鉄ED12形)や、アメリカのゼネラル・エレクトリック社製で1923年に当時の鉄道省(国鉄)が輸入したE61形などで、貨物列車が走っていた時代はこれらの電機の活躍を追った。貴重な機関車は現在も横瀬車両基地に保存され、時々一般公開されている。

富士山の裾野を走るローカル私鉄、岳南鉄道(現・岳南電車、静岡県)も貨物輸送で有名だった鉄道だ。東海道本線吉原から岳南江尾まで9.2 kmの短い路線だが、かつては沿線に数多く操業する製紙工場の輸送で活況を呈し、貨物が主体といえる鉄道だった。だが、製紙会社の生産量減少やトラック輸送への移行などで輸送量は減り、貨物営業は2012年3月末で終了した。

魅力ある1928年製の凸型電機ED501や、1927年製造のED291など、さまざまな私鉄や国鉄から譲渡された電機が活躍していたのが思い出深い。2021年8月には岳南富士岡駅構内にこれらの電機を展示した「がくてつ機関車ひろば」が開設され、先の2両のほかED402、ED403の計4両を静態保存している。

歴史的機関車の宝庫だった近江

ローカル私鉄の電機といえば、滋賀県の近江鉄道も忘れてはならない存在だった。近江商人ゆかりの地にこの鉄道が開業したのは1898(明治31)年6月と、私鉄有数の長い歴史を誇る。

同鉄道の貨物輸送は高宮と多賀(現・多賀大社前)を結ぶ2.5kmの多賀線沿線が主力で、住友セメントとキリンビール専用線が延びており貨物列車の運転も盛んだったが、昭和50年代になると貨物輸送の縮減が進み、キリンビールの貨物輸送、セメント原石の輸送、日本石油の輸送が相次いで廃止され、貨物輸送は1988年3月に全廃された。

現役時代の近江鉄道ED31形(撮影:南正時)

同鉄道の電機は歴史的にも貴重な存在が多く、とくにED14形は国鉄が1926年の東海道線電化開業時にゼネラル・エレクトリック社から輸入した由緒ある機関車だった。また、1923年製で国産電機では最古級のED31形も貴重だった。これらの電機は彦根駅構内の「近江鉄道ミュージアム」で保存展示していたが、同施設は2018年12月に閉鎖。元東武鉄道のED4000形(4001号)は東武博物館へ、ED31形4号機は東近江市の酒造会社で保存されることになった。

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