新型「WRX」この形とサイズが必然であった理由 北米でウケる安心と愉しさの“ちょうどよさ"

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では、新型WRX S4の走りはいかがなものなのか。スバルが主張するのは「安心と愉しさ」であるが、実際にメディア向けサーキット試乗会でそれを確認することができた。

まずは、「愉しさ」の部分。それは、ターボエンジンが生み出す圧倒的なパワーだ。

ドライブモードセレクトによりさらに強烈な加速力を発揮する(写真:SUBARU)

2.4リッター水平対向ターボエンジンが生み出す最高出力275馬力・最大トルク375Nmという大パワーを、スバル得意のAWD(4WD)技術は余すことなく路面へと伝える。その加速力は強烈なもの。このパワー感は、理屈ではなく本能に訴える、スポーティモデルの大きな魅力となる。

ちなみに旧型モデルと乗り比べると、新型はその大パワーがより扱いやすくなっている。旧型は、ターボによるパワーの盛り上がりが唐突なのだ。旧型の唐突さがスリリングだと感じる人もいるかもしれないが、どちらにせよ強大なパワーが「愉しさ」としてWRXの魅力となっていることは間違いない。

しかし、パワーは強烈でも、決して“怖くて乗れない”とは思わない。なぜなら、どれだけ速くても、そこに「安心」が感じられるからだ。

どういうことかというと、クルマはコーナーリングを攻めていくと最終的にコントロールを失うが、WRX S4の場合、その失い方が唐突ではないし、そもそも危険を感じにくい方向で発露するのだ。端的に言えば、後輪が流れるいわゆる“スピン“になりにくい。

「WRX S4 STI SPORT」の走行イメージ(写真:SUBARU)

後輪がしっかりと路面をつかんで離さないような感覚がある。スバルならではの、優れたシャシー技術が生み出すクルマの挙動だ。

また、運転手のミスをカバーする電子制御も効果的に介入する。たとえば、無理なスピードでコーナーに進入したとき、電子制御が働いて失速はするけれど、狙った走行ラインにとどめてくれるから、危険な状態に陥らない。

もちろん程度の差はあるが、この手のスポーティモデルの中では、格段に挙動の乱れが少ないと感じる。これがスバルの言う「安心」なのだ。

「安心と愉しさ」を感じやすいスバルらしい1台

スバルの得意の水平対向エンジンとAWD技術が「愉しさ」を生み、シンメトリカルレイアウトにこだわったシャシー技術が「安心」を提供してくれる。そして、世界的にも評価の高い車体の衝突安全性能や、先進の運転支援システム「アイサイト」も「安心」を生み出す力となる。

そういう意味でWRX S4は、「安心と愉しさ」を感じやすい、いかにもスバルらしいモデルと言えるだろう。「スバリスト」や「スビー」たちが愛するのも当然だ。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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