新型「WRX」この形とサイズが必然であった理由 北米でウケる安心と愉しさの“ちょうどよさ"

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ここで「コアなファン」という言葉が出た。スバルのコアなファンは日本にも存在しており、よく「スバリスト」と呼ばれる。同じようにアメリカにもコアなファンは存在しており、彼らは「スビー(SUBIE)」と呼ばれている。

「WRXは、お客様の層がおもしろいんです。1992年に最初のWRXを出してから、今でも、ずっと25歳から35歳の年齢層をメインのお客様としています」と五島氏。

初代「インプレッサ WRX」(写真:SUBARU)

約30年にわたって顧客の年齢層が変化していないとは驚きだ。その年齢を過ぎると卒業してしまうが、それと同じだけ新たな若者がユーザーとなるのである。

「その時代時代の若い人を常に引き付けているのがWRXです。おもしろいのが、スバル車の中でも、後席の乗車率はWRXのほうがフォレスターやインプレッサよりも高いんです。なぜなら、子育てをしているから。子どもを後ろに乗せているんですね。側面衝突の安全性もWRXは高い、ということもあります。

北米スバルを支える2つのユーザー像

五島氏は、次々と若い人が新規ユーザーとなる理由について、次のように述べた。

「よくあるのが、子どものころからスバル車のオモチャに触れて、だんだんスバル好きになってゆくというケース。最近はYouTubeで昔のWRC(世界ラリー選手権)の活躍を見て好きになることもあるようです。今、スバルはWRCへ参戦していませんが、そうした動画がありますし、ゲームもあります。今のようなデジタルの時代のほうが、過去の財産をうまく掘り起こしてくれるようです」

WRCで活躍した「インプレッサ WRX」(写真:SUBARU)

アメリカのファンのイベントであるスビーフェスに行くと多くがWRXで、歴代モデルがずらりと並ぶという。だからこそ、「その列に新型WRX S4が入らなかったら、先輩に顔向けができません。そこはプレッシャーでした」と語る。

若い世代に人気が高いことは、スバル全体としても非常に重要だ。なぜなら、“ブランドの活力“につながるからだ。

「アメリカのディーラーのニーズとして、若い人を引き付けてブランドに活力を持たせたい、というものがあります。その先兵がWRX であり、『BRZ』です。例えば、娘さんが大学生になって“少し格好良いクルマに乗りたい”、でもお父さんは“安全なクルマに乗ってほしい”となったとき、折り合いをつけるのがWRXとなります。また、息子さんがWRXに乗っていて、“これはいいクルマだ”と言うので、“じゃあ、お父さんもフォレスターを買ってみよう”という好循環もあります」と五島氏はWRX の価値を説明する。

スバルというブランド全体を考えたとき、若い世代を常に引き付けるWRXはなくてはならない存在であったのだ。

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