14万人不足の深刻「物流危機」克服する合理的秘策 発想の転換で危機をチャンスに変えられる
しかし、この数年で状況は大きく変わっている。
人手不足と高齢化の影響により、物流コストが上昇の兆しを見せていたところに、新型コロナウイルス・ショックが起き、マスクなどのモノ不足やワクチンの輸送などでも物流の大切さがクローズアップされるようになったからだ。
さらに、数年前からにわかに盛り上がっているSDGsやCO2削減などのサステイナビリティのムーブメントも、物流やサプライチェーンへの関心を高める大きな要因となっている。企業は自社だけでなく、取引先を含めたサプライチェーン全体でのCO2の排出量削減に取り組まなくてはならず、それにはさまざまな情報をデータ化、「見える化」して把握するサプライチェーン・マネジメント(SCM)が必須となるからだ。
何事も起きていない平時にトランスフォーメーションの機運を盛り上げていくのは難しいが、幸いなことに今は強いフォローの風が吹いている。これを生かさない手はない。これまで「物流」にあまり関心を示さなかった企業も、次々と考えを変え始めている。
実は、私が2017年にアクセンチュアに入ったころ、物流を根本的に変えていこうというプロジェクトはほとんど走っていなかったが、現在では20本を超えており、日々、うれしい悲鳴を上げている。
注目される「次世代物流プラットフォーム」
では、物流クライシスが叫ばれる中、企業はどんな考え方で、物流を核としたサプライチェーン改革に臨めばいいのか。
私が注目し、実現に向けて動いているのが、業界ごとに物流を束ね、共同配送や受発注・決済、トレーサビリティーなどさまざまな機能をつけ加えた「次世代物流プラットフォーム」だ。いきなり「物流プラットフォーム」と言われても、戸惑う人がいるかもしれない。まずは、身近な存在となった「ウーバーイーツ」を思い浮かべてほしい。
ウーバーイーツというプラットフォームには、多数の飲食店と配達員、そして顧客である消費者が登録している。
このプラットフォームが持っている機能は、顧客から注文を受けて飲食店に発注する「受発注機能」、料理を運ぶ「輸送機能」、顧客から代金を受け取り、手数料を差し引いて飲食店と配達員に支払う「決済機能」、さらには、最短の時間で届くように配達員に配達を割り当てる「マッチングの最適化機能」などだ。
2020年1月以降、新型コロナウイルスの影響で人々が外出や外食を控えたため、ウーバーイーツは飲食店の新たなインフラとして急速に広がった。もし、飲食店が自前で宅配サービスを始めようとしたら、受注の仕組みの構築、配送員の採用、宅配バイク購入、交通事故対応などでコストと手間がかかってしまう。売り上げ規模が大きくない限り、割に合わない。
大手チェーン店から中小零細に至るまで、飲食店はウーバーイーツというプラットフォームを通じて配送機能をシェアし、労力とコストを最小限に抑えることで新たな収入源を得ることができた。
ここで1つ思考実験をしていただきたい。飲食店にとって、宅配機能は差別化要因なのだろうか。もし、差別化要因だとしたら、それは具体的には何だろうか。
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