GPIFの隠れた焦点、「運用枠」増加に異論も

塩崎恭久厚生労働相の下、動き出す改革

 9月5日、塩崎恭久厚生労働相(写真)の下で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革が動き出す。3日撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 5日 ロイター] - 塩崎恭久厚生労働相の下で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革が動き出す。リスク性資産の運用比率増加に注目が集まりがちだが、重要なポイントが隠されている。運用資産ごとの「枠」を現在の4から増やし、不動産や未公開株を新たなひと固まりとするかどうかだ。増枠はリターンの拡大につながりやすいとの意見がある一方、非効率な投資になりやすいとの批判もあり、議論の行方は不透明なままだ。

「卵は別々のかごに盛れ」──。分散投資について、よく耳にする例えがある。複数の卵を1つのかごに入れておくよりも、別々のかごに入れておいた方が、いざという時のリスクを小さくできるという考え方だ。

GPIFの今のポートフォリオでは、短期資産を除く国内債券、国内株式、外国債券、外国株式の4つに整理し、資産127兆円を運用している。今年2月には先進国を対象にしたインフラ投資の開始を表明したが、最大2800億円と規模が小さいことなどから「外国債券」に分類されており、依然として「かご」は4つのままだ。

一般的に、投資対象が多様であればあるほど分散投資効果が大きいとされているため、「枠は4つよりも5つのほうが良いだろうし、ポートフォリオの見た目も分散投資が分かりやすくなる」と主張する専門家もいる。

具体的には、インフラをはじめ不動産や未公開株などを1つにまとめ、株式や債券以外の資産を指す「オルタナティブ」として別枠を設ける案が選択肢の1つとして浮上しているようだ。

もっとも実際に別枠を設けて分散投資をすることに慎重な対応を求める声は根強い。

年金の実務に詳しい日本大学文理学部の田中周二教授は「インフラ、不動産、未公開株はそれぞれリスクやリターンの特徴が異なるものであり、1つにまとめるのは危険だ」と指摘する。 

また、仮に別枠を設けた場合には目標値が定められる可能性もあり、これに対する田中教授の懸念も強い。GPIFの運用資産総額を考えれば、わずか5%であってもその金額は約6.4兆円規模にもなる。「目標値を先に定めてしまえば、その目標を達成するために、悪い案件であっても無理やり投資してしまう事態を招くかもしれない」からだ。 

実は、GPIFでオルタナティブ投資について議論が交わされたのは、今回が初めてではない。2009年6─7月にかけても、オルタナティブという新たな枠を設けるかどうかについて運用委員会で集中的に検討されたが、「意味のあるほどの金額の投資が難しい」などの理由で見送りとなった。

塩崎厚労相自身も「強固なガバナンスの下で、分散投資をすることが安全かつ効率的な運用につながる」と語るように、年金の運用先を決める際には、責任の所在を明らかにしつつ、国民に対する十分な説明を行う必要がある。

新たな基本ポートフォリオの発表は今秋とみられており、引き続き慎重な議論が求められている。

 

(梅川崇)

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