イギリスの「鉄道防犯対策」は日本と何が違うか ロンドン同時テロ後に防犯カメラ設置を徹底

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地下鉄などと同様、こちらも車内に防犯カメラがある。最近の傾向として乗客のほとんどが座席指定された前売りの格安切符をオンラインで購入していることを考えると、運行会社はカメラの映像と併せて、特定の座席に座っている人が「どこの誰か」をほぼ把握できる。防犯のための監視はかなり高いレベルに達していると言えよう。

京王線の事件では、乗客が窓から車外に脱出した映像が残っている。「もし、ガラスを割って外に出られたらよかったかも」と思う人もいるのではないだろうか。

イギリスには実際にガラスを割るためのハンマーを備えた列車がある。西海岸本線(ウェスト・コースト・メイン・ライン、West Coast Main Line)を走るアヴァンティ・ウェスト・コーストの車両「ペンドリーノ」には、座席車中央部にハンマーを備え付けており、万一の際、車両両端のドアまで行き着かなくても、ガラスを破壊して車外に出られるようになっている。このような非常用ハンマーはフランスのTGVや中国の高速列車など他国でも見ることができる。

ただ、列車事故など緊急時を想定した車両の仕様条件に関する書類を確認すると、英国では列車内に窓ガラス破壊用のハンマーの設置は義務付けられていない。また、緊急時の窓の破壊は「窓を通じてでないと、担架で乗客が救出できない時などの『最後の手段』」とわざわざ言及している。

ロンドンの新型バスに設置された非常脱出用装置「セーフパンチ」。安全シールを外して強く叩くとガラスが割れる(筆者撮影)

一方、ロンドンを走る新型バスには、特殊な脱出用の窓ガラス破壊装置が取り付けられている。「SAFE PUNCH(セーフパンチ)」と名付けられたこの装置は、大きなボタン状になっており、安全シールを外した後、強く叩くとガラスが割れるように先端に鈍器がついている。これならハンマーを探すことなく、すみやかにガラスを割って脱出できる。また、「非常時にはこれを使えばいい」と日頃から乗客に促すこともできる。

運行妨害にはどう対応している?

ロンドンの東側一帯には、運転士なしで走る軽鉄道「ドックランド・ライト・レールウェイ(DLR)」が走っている。市内中心部の金融街・シティーと新金融街・カナリーウォーフ、ロンドン最大の見本市会場・エクセルなどを結ぶこの鉄道は全長38km。運行スタッフがボタンを押せばドアが閉まって走り出すという「半自動運転」で運行されている。

筆者はDLRを長年にわたって利用していたが、いたって順調に走る乗り物だと感じていた。ところが、最近利用すると運行スタッフが1編成(2両編成を2~3セット連結して運行、通り抜け不可)につき1人しか乗っていない、駅員がいないことを知ったうえで、学生が閉まるドアに足やカバンを入れて運行の妨害をしているケースがまま見られる。

こうした妨害行為が起こると復旧まで何分もかかるが、ひどい例では、次の駅に向けて出発というタイミングで意図的にSOSボタンを押して非常コックでドアを開けるという妨害も実際に見た。こうなると運転指令から原因調査を求められ、動きが取れなくなる。車内に運行スタッフが1人しかいないため、こうしたケースでは列車を放っておいて犯人を捕まえるというわけにはいかない。

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