日本振興銀行事件--江上剛・社外取締役の社長選出は適正か?(その2)
木村剛・前会長以下、現社長を含め経営陣の大半が逮捕されるという日本振興銀行の異常な事件については前回のコラムに書いたとおりである。
経営陣の一斉逮捕と同時に、即刻、新社長になったのが、2004年の日本振興銀行発足当初から社外取締役だった江上剛氏(本名・小畠晴喜)だ。江上剛氏は、単なる社外取締役ではなく、取締役会議長の重責を担ってきた。
形だけの、いわば飾りの社外取締役なら、木村剛・前会長以下の経営陣総逮捕という緊急避難として、江上剛氏が新社長に就任するのも仕方のないところと受け取ることもできないではない。
世間の大方もそのような受け止め方をしたのではないか。
正常ならざる日本振興銀行を新社長として立て直すのは「たいへんご苦労な話」で、同情を禁じえない、と--。
しかし、日本振興銀行や金融業界筋から出てくる情報は、そうした同情論とは反対のものである。
金融筋によると、木村剛・前会長と江上剛・新社長の関係は、「親密で、心情的には一心同体に近いのではないか」というのである。江上剛・新社長は、04年から日本振興銀行の社外取締役となっており、関係は浅いものではない、という観測からである。
木村剛・前会長以下の経営陣は逮捕され、捜査が進行することになるが、仮に有罪ということになると、江上剛・新社長の立場はたいへん厳しい状況になるのではないか。
江上剛・新社長は、社外取締役=取締役会議長として、木村剛・前会長以下の経営陣の経営を長らく「監督」してきた立場である。木村剛・前会長の経営が「有罪」になれば、江上剛・新社長が「それは知らない」という立場は取れない。
社外取締役、取締役会議長という立場は、そう軽いものではないのである。