「クスリの裏側」が疑わしいワケ 普段何げなく飲んでいるその薬、本当に必要ですか

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医師と製薬会社がこうした持ちつ持たれつの関係にあったのは事実。通院のたびに処方される薬の裏にはこういう事情があったのか。一連の報道を通じて、こうしたうがった見方をする人も多かったはずだ。

日進月歩のサイエンスの恩恵を受けるために

だが、ここ数年で製薬会社を取り巻く環境は激変しつつある。これまでの稼ぎ頭だった生活習慣病薬が特許切れを迎え、売り上げが激減。新薬開発の舞台は、がんや希少疾患などアンメッドメディカルニーズ(未充足の医療ニーズ)が高い病気に移りつつある。

その多くは、タンパク質など生物由来の物質に由来し、ナノテクノロジーを駆使して製造されるバイオ医薬品だ。段階的な化学合成の工程を経て製造される従来の医薬品に対し、高い治療効果がある。しかし、こうした薬の開発は難易度が高い。基礎研究から考えれば、1つの薬が市場に出るまでに10年以上かかり、その成功確率はわずか3万分の1。その費用も数百億円に上るとされる。とはいえ、次の10年を生き永らえるためには、こうした分野での成功を積み重ねていかなければならない。

一方、こうした新薬の登場のおかげでこれまで治療をあきらめざるをえなかった多くの患者が救われていることも事実だ。たとえば、免疫反応を強化して攻撃する新たながん治療薬は、今後幅広いがん種への適応が期待されているし、緑内障治療に使われている薬が薄毛(男性型脱毛症)にも高い有効性を示すとして承認申請に向けた治験中だ。

こうして進化するサイエンスの恩恵を受けるためにも、薬や医療を端から遠ざけるのではなく、正しい知識を持つ賢い患者になることが求められている。

週刊東洋経済2014年9月13日号(9月8日発売)の特集は「クスリの裏側」です。
普段何げなく服用している薬は本当に必要なのでしょうか。安全なのでしょうか。相次ぐ不祥事で製薬業界の信頼が揺らぐ中、身に付けておきたい本当に必要な知識をお届けします。⇒詳しい目次・購入はこちらから

 

堀越 千代 東洋経済 記者

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ほりこし ちよ / Chiyo Horikoshi

1976年生まれ。2006年に東洋経済新報社入社。08年より『週刊東洋経済』編集部で、流通、医療・介護、自己啓発など幅広い分野の特集を担当してきた。14年10月より新事業開発の専任となり、16年7月に新媒体『ハレタル』をオープン。Webサイト、イベント、コンセプトマガジンを通して、子育て中の女性に向けた情報を発信している

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