世界初のがん幹細胞標的薬、治験中止の波紋 大日本住友製薬の中期計画にも影響必至
週明け5月26日の株式市場。大日本住友製薬の株価が前週末の1458円から20.6%安の1158円と急落した。終日売り気配のまま値が付かず、大引けでようやく値幅制限の下限である300円安で売買が成立。翌27日も株価は軟調な推移となった。
暴落の原因は、前週末23日の取引時間終了直後に発表した1枚のリリースだ。開発中の抗がん剤「BBI608」の、結腸直腸がんを対象とした単剤の第3相国際共同治験における新規患者登録の中止を伝えるもので、本試験は事実上、中止となる。
想定外の中間解析結果
大日本住友は精神神経領域の薬を得意とする準大手製薬会社。現在は、がん領域を精神神経と並ぶ事業の柱として確立することに取り組んでいる。その牽引役を担うのが、2012年に買収した米国のがん領域を専門とする創薬ベンチャー、Boston Biomedical, Inc.(BBI)だ。中止となったBBI608の結腸直腸がん対象の単剤治験は、複数進行するプロジェクトの中で最も開発ステージが進んだものとして、北米では2015年度、日本でも2016年度の発売開始を目標としていた。
新規患者登録が中止となったのは、独立安全性モニタリング委員会が実施した97例の登録患者を対象とする中間解析において、DCR(病勢コントロール率、病状をコントロールできている患者の割合)が定められた判断基準に達しなかったため。安全性には問題が認められなかったが、腫瘍の縮小という薬の有効性の点で基準に満たないと判断された。
中止を発表した23日の夕方、アナリスト向けに行った緊急カンファレンスコール(電話会議)で、多田正世社長は冒頭、「誠に残念で私自身、大変驚いている次第」と説明。大日本住友製薬にとっても、中間解析結果が「想定外」だったことを明かした。
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