50年後「日本の高速道路」はどうなっているのか? 日本道路会議の議論に見た専門家の希望と課題

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パネルディスカッションを視聴した学生が提出した感想を見てみると、彼らの関心は多岐にわたっていたが、社会経験が浅く、高速道路が物流の基幹を担っているという実感が乏しかったためか、小野塚氏の「道路は血管」というフレーズに共感を寄せる学生が多かった。

白川郷のバスターミナル。東海北陸道経由で名古屋や金沢と結ぶバスが発着する(筆者撮影)

また、大都市での生活と比べ、地方特有の女性への目に見えない社会的圧力や、情報不足などで閉塞感を抱いていた北関東育ちの川端氏が、クルマの運転免許を取り、高速道路を使って県外へと自由にドライブに行けるようになった体験からくる解放感や、自由の謳歌という感情に、同様の体験をしていた女子学生から、多くの共感の声が聞かれたのも興味深かった。

未来の高速道路に求められるもの

セッションの後半では今後、高速道路がどのように進化するかという視点で、未来のハイウェイを占う議論が展開された。

自動運転の進展のベースとなる役割を期待する声、VR(仮想現実)やメタバース(3DCG仮想空間)との連動、ETCのさらなる進化やほかのカード系サービスとの連携などだ。

一方で、自動車中心に整備されてきたために、これまで自転車やベビーカー、車いすなど「弱者」への配慮が足りていなかった道路行政の転換への期待、そしてこの連載でも時々取り上げてきた、高速バスの路線伸長が地方の鉄道の経営を悪化させているアンバランスの解消などの議論もあった。

さらに、「血管」の目詰まりである「渋滞」の根本的な解消に向けた施策への希望も語られた。

高速道路が私たちの生活の質や利便性をさらに向上させるインフラとして機能を発揮し続けられるかどうか。今回、ともに議論した専門家たちと情報共有しながら、課題の解決に向けて取り組んでいきたいと感じた。

なお、このセッションも含めた日本道路会議の模様は、2022年3月31日までまでオンデマンドで視聴することができる。もし関心を持たれたら、ぜひ日本道路協会ホームページより視聴の申し込みをしてほしい。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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