デジタル資産「NFT」熱が急速に高まる本当の理由 コンテンツ・権利の「流通革命」

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メタバースでのNFTの活用も注目です。ゲームやSNSに限らず、さまざまな「空間」が登場しており、それをNFT化することで、不動産売買のような現実社会と同様の経済活動が行われるようになっていくでしょう。たとえばファッション業界は、もうすでにアバター用のNFTファッションの開発などに取り組んでいます。

スポーツや芸能などのファンビジネスなら、トレーディングカードや生写真のほか、特別なVIP席に入れるといった会員権などもNFTで販売するようになるはずです。特にスポーツはゲームとの相性が非常にいい。実際、日本のプロチームの中にはトレーディングカードを使ったゲーム開発に乗り出しているケースもあります。また、ライブチケットの転売問題なども、NFT化することで解決できるでしょう。

音楽はCDからダウンロード、そして定額・聴き放題のサブスクリプションに移行しつつあります。その中で、NFTをもっている人しか聴けない仕組みや楽曲使用料の管理など、いろいろな活用法が出てくるでしょう。

組み合わせることで、その可能性は広がる

『NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来』(朝日新聞出版)
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また、いま多くのクリエイターがクラウドファンディングで資金調達をしていますが、NFTと組み合わせることで、その可能性も広がります。たとえば映画なら、単発の作品への出資を募って終わりではなく、NFTを使えば、その監督の次回作以降にも有効な優待の権利などを販売することで中長期にわたるファンコミュニケーションができるでしょう。こうした事例が2021~2022年の短期間で一気に登場することが予想されます。

NFTビジネスに共通しているのは「唯一無二の権利等の何かを証明(正確には識別)できる」NFTならではの特性に加え、「価値そのものを送付・移転することができる」「コピー・改ざんができない」「価値の移転を追跡できる」というブロックチェーンならではの特性を活用する点です。その意味でも、ビジネスプレイヤーは「本当にそれはNFTである必要があるのか」ということを、ユーザー目線も含めて、きちんと問わなければ成功しないでしょう。

当たり前ですが、何でもかんでもNFTを発行してビジネスをやればうまくいくというものではありません。それぞれの業界によって商慣習や課題が異なるので、それぞれの業界における課題やニーズに合わせたアプローチが必要なのです。個別の事例については今後の記事でたっぷり説明します。

図 今後の成長のキーファクター
天羽 健介 日本暗号資産ビジネス協会NFT部会長

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大学卒業後、商社を経て2007年株式会社リクルート入社。新規事業開発を経験後、2018年コインチェック株式会社入社。国内暗号資産取扱数No.1を牽引。2020年5月より執行役員に就任。現在はNFTやIEOなど新規事業開発や暗号資産の新規上場関連業務などを行う部門を管掌。2021年2月コインチェックテクノロジーズ株式会社の代表取締役に就任。日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)NFT部会長。

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