8万人足りない!米国「トラック運転手不足」の末路 なり手は減り続け、配送期間は長くなる一方

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影響は経済の全域に広がり、成長の足かせとなり、消費者物価を押し上げ、バイデン大統領の支持率を引き下げている。にもかかわらず、ホワイトハウスは対応にてこずっている。

ホワイトハウスは先日、サプライチェーン問題の緩和に向け一連の対策を打ち出した。滞留貨物の処理を加速できるよう港湾に予算の用途変更を許す、といった措置などだ。

これに先立つ10月、バイデン大統領は物流の停滞を緩和するために主要な港の24時間稼働を開始すると発表していた。しかし、このような取り組みを進めても、トラックの運転手不足がなお大きなボトルネックとして残ることが、早くも明らかになっている。

ロサンゼルス港とロングビーチ港の責任者によると、少なくとも24時間体制に移行して間もない段階では、搬入・搬出に訪れるトラックの数はほとんど増えなかった。

ロサンゼルス港湾局の局長ジーン・セロカは、ロサンゼルス港のトラック受け入れ可能枠の約3割が連日未使用となっている実態を7月の段階でホワイトハウスに伝えていたと明かす。トラックの運転手やコンテナ輸送用のシャシー、トラックから荷下ろしを行う倉庫作業員の不足が主な要因であることも報告していた。

90%に達する離職率

先日成立した1兆ドルのインフラ投資法が、運転手不足の緩和に役立つ可能性はある。同法には、3年間の試験的な見習いプログラムが盛り込まれており、これにより18歳の運転手でも州をまたいだ運転が可能となるからだ。大半の州では、21歳未満でも業務用の運転免許を取得できるが、現時点では連邦の規制により州をまたいだルートは走行できない。

しかし業界の専門家は、こうした取り組みが切迫した問題の解決につながる可能性は低いと話す。トラックの運転手になろうという人が、あまりにも少ないからだ。

高齢で引退していく運転手の穴を埋める若い人材が足りなくなる中、運送会社は人手不足に危機感を募らせている。が、トラック運転手という職業に対する偏見、孤独なライフスタイル、大学進学を目指す若者の増加により、運転手の採用は困難を極めている。大手運送会社では離職率がなんと90%に達しており、従業員の引き留めも頭の痛い問題だ。

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