8万人足りない!米国「トラック運転手不足」の末路 なり手は減り続け、配送期間は長くなる一方
こうした状況を受けて、運送会社は賃上げを進めている。アメリカ労働統計局によると、長距離運転手の1週間の平均収入は2019年の年初に比べ約21%高くなっている。商用トラック運転手の昨年の所得中央値は4万7130ドルだった。
賃上げを可能とするべく、運送会社が進めているのが料金の引き上げだ。アメリカ小売業協会でサプライチェーンや通関の問題を担当するジョン・ゴールドは、運転手不足が小売業者の仕入れコストを急激に押し上げる要因となり、それが店頭価格の上昇という形で少しずつ消費者に転嫁されるようになっていると話す。
ゴールドによれば、「物流のサプライチェーンのあらゆる段階で費用が上がっている。海上、トラック、鉄道のすべてで物流費が上がっている」。
年収800万円でも、なり手が減少
ネブラスカ州オマハに本社を構え、約9500人の運転手を雇用するワーナー・エンタープライゼスの社長兼最高経営責任者デレク・レザースは、「運送業に30年以上携わってきたが、運転手市場がこれほど逼迫したことはなかったと断言できる」と話す。
オクラホマ州イーニドのグロンダイク・トランスポートで人事部長を務めるホリー・マコーミックは、同社では平均約7万ドルの年収を提示しているが、それでも長期間家を離れるトラック運転手のなり手は減ってきていると話す。
新型コロナ禍で荷物の積み下ろしにかかる時間が増加し、運転手の荷待ち時間も増えた。運転手の賃金は走行距離に応じて支払われることが一般的なため、マコーミックによると、待機時間の増加によって運転手の賃金が下がるという厄介な状況も生まれている。
人手不足を埋め合わせるには、女性や非白人の採用拡大に向けた投資の拡大が必要だと、業界幹部や研究者らは指摘する。アメリカトラック協会の2019年の報告書によれば、女性はトラック運転手の7%、人種的マイノリティーは40%にとどまっている。
同協会のチーフエコノミスト、ボブ・コステロは、サプライチェーンに関する別のボトルネックはコロナ収束で解消するとしても、運転手不足はさらに悪化する可能性が高いと話す。「運転手不足に手を打たなければ、買い物に行っても店の棚が空っぽという未来が待っていても不思議ではない」。
(執筆:Madeleine Ngo記者、Ana Swanson記者)
(C)2021 The New York Times Company
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