「米中首脳会談」このタイミングで開催の意味 会談から透けて見えた米中それぞれの思惑

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総選挙に勝利した岸田文雄首相の早期ワシントン訪問を求める日本側の要求に対して、ホワイトハウスが躊躇したことも、全面対立状態からの一歩後退が影響していると思われる。首相官邸と外務省は、早ければ今月末にもホワイトハウスでの会談を行うことを公然と求めた。しかし、アメリカ側は丁重ながら日程の先送りを図り、おそらく来年に延期されるとみられる。

これは主に、バイデン氏のアメリカ国内での多忙なスケジュールに加えて、ほかの同盟国の来訪スケジュールとの調整の必要性もあったことによる。しかし、一部の見解では、バイデン政権としては、習氏との首脳会談と岸田氏のアメリカ訪問との間にある程度の期間を空けることで、対中関係改善とのバランスを取ろうとしていると見られのを避けようとしたという見方もある。

日本の新政権にとっても、次回の日米首脳会談開催は挑戦的な意味合いを持つ。一方では、中国への対処を追求する努力と、経済的安全性を確保するための対策を組み合わせ、よりバランスの取れたアプローチを提唱する内閣の面々の立場を強めることにもなりうる。

他方、岸田首相にとって、台湾をめぐるアメリカとの軍事協力を強化し、より迅速に行動できる防衛力強化を主張する自民党の強硬派からの圧力がさらに高まる可能性も捨てきれない。

双方共通の「課題」に対する成果は?

しかし、今回の日中首脳会談の成果を過大評価するのは早計である。対立がエスカレートすることは双方の利益にならないということを認めただけで、過去10カ月間に頻繁に取り上げられた両首脳の課題については、目に見える動きはなかったからだ。

バイデン氏は、チベットや新疆ウイグル自治区から香港に至るまでの中国の悲惨な人権問題、不公平な貿易・産業慣行、南シナ海での軍事力増強、航行の自由に対する脅威、そして「自由で開かれたインド太平洋」の必要性について駆け足で説明した。

これに対して中国側は、新たな冷戦を引き起こしているとしてアメリカを非難した。習氏がバイデン氏に語ったとされるアメリカの罪とは、ハイテクデカップリングの提唱、経済制裁、軍事同盟を結んで中国に対峙すること、台湾を使って中国を封じ込め、中国の内政に干渉することなどである。

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