環境に悪くても「牛肉」を食べ続けてしまう必然 肉好きが食べる量を減らすと何が起こるか

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ただそう聞いたからといって、すぐにでも牛肉を食べる量を減らそうと実行に移す人はかなり稀有だと思います。一方で、50年後や100年後といった未来によりよい地球を残したいという思いを持っている人は多いのではないでしょうか。それでも、私たちは牛肉を食べるのをやめられないわけです。ここに、「人間らしさ」の難しさがあります。

ここで言う「人間らしさ」には、「食べる」という行為が持つ特殊性と、人間の認知バイアスが深く関係しています。「食べる」とは、ものを直接体内に取り込む行為であり、また生命維持に直結するという意味でとても特殊な行為です。

また、毎日のように繰り返し、何を、いつ、どこで、どのように食べるかという何百もの選択が伴う行為のため、あまり深く考えずに日々の食事を決めてしまうことが多くなります。このような状況こそ、人間の認知バイアスが発生しやすい状況なのです。

「究極の二択」でハードルを上げている

私たちが肉を食べるのをやめられない「人間らしい」理由の1つに、「現在志向バイアス」や「現状維持バイアス」があります。このようなバイアスによって、自分の健康や将来の環境問題よりも、いまおいしい肉を食べることを優先してしまうのです。

また、これらの認知バイアスに加えて、もう1つ理由があります。それは、人はできるだけ省エネで物事を考えようとするため、よく考えずに、わかりやすい結論に飛びついてしまう傾向があるからです。

肉食と環境問題の事例でいうと、「ちょっとした変化ではどうせ意味がない」や「やるなら菜食主義者になるぐらいでないと意味がない」など、極端で恣意的な結論を出して、それ以上考えるのをやめてしまうのです。

このように、行動を「まったく変えない」か「すべて変える」の二択で考えるほうが、「10%だけ変える」や「2%ずつ段階的に変える」など他の無数の選択肢を検討するよりも、シンプルで省エネなわけです。そして、二択で考えるとなると、「行動を変える」イコール「すべて変える」になってしまい、行動を変えるハードルが高くなりすぎて、結局ほとんどの人が「まったく変えない」を選ぶことになるのです。

さらに、自分の行動の変化による影響を、早とちりして、誤って捉えてしまうことも少なくありません。どういうことか説明するために、ここで、AさんとBさんに登場してもらいましょう。ちなみにAさんは健康志向で、Bさんは大の肉好きです。この2人が、ともに肉を食べる頻度を減らしてみることにしました。

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