システム障害はごく一端「みずほ」深刻危機の本質 営業現場は人員削減の草刈り場?怒る行員たち

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実際、支店の統廃合などは当初の4月から5月にずれ込んだものの、実施している。法人顧客と個人顧客に対応する総合店スタイルから、法人顧客は法人部(法人店)に、個人顧客は個人中核店、相談店舗に改編するなかで統廃合が行われている。

しかし、これについて、営業現場からはこんな声が伝わってきている。

「実質的な人員削減もあって、一法人部当たりの取引先企業数は一挙に倍増以上となった一方で、行員数は横ばいに近い。したがって、担当行員たちは顧客を回り切れないという状況になっている」

そこに、一連のシステム障害による混乱が営業現場に襲いかかった。営業現場の負荷がいかに重くなったのかは容易に想像できる。

みずほグループに限らず、メガバンクグループは子会社銀行のリテール改革に挑んでいる。その一環として行われているのが店舗の統廃合や支店人員の大幅な削減である。この一連の戦略を成立させている前提はデジタル技術の積極活用にほかならない。

その土台と言える基本的な部分で相次いで発生したシステム障害は、リテール改革を支える前提が狂ったことでもある。しかし、みずほグループは突っ走った。

わざわざ変化への対応力が弱い集中型の硬直的な組織構造を作り上げて、上意下達を徹底させたという近年のみずほグループが陥った罠である。そこで目立つのは、現場軽視による観念的な収益計画の立案と、その実現を推し進める1960年代型モデルの復活のようなムードでしかない。

人員削減を中核とするコスト削減への焦り

この暴走劇の背景には、「2026年度までに1万9000人」という人員削減計画を中核とするコスト削減への焦りがあったにちがいない。

2月に発生したシステム障害の発端となったデジタル口座への膨大なデータ移行作業も、4月以降、デジタル口座化すると、紙ベースの預金通帳を廃し、さらに印紙税負担を回避できるという「2021年度のコスト削減効果を実現するため」(みずほ関係者)にほかならなかった。

4月から5月に1カ月ほどずれ込んだとはいえ、システム障害の原因を究明できていないなかであるにもかかわらず、店舗再編を断行した経営判断の裏には、同様に、それを通じた人員削減で2021年度に人件費圧縮を加速しなければならないという焦燥感があったと言える。その焦燥感がまともな経営判断を阻害したと言い換えてもいい。

なにしろ、法人顧客を担当する法人部では、3、4店舗を実質的に1店舗に集約するような統廃合が行われた。これは店舗再編による効率的な運営という名目の下で行われた営業店幹部ポストの大幅削減策としか見えない。

それだけではない。みずほでは最近、関連会社などへの転籍となる実質的な退職年齢を引き下げてきた。

転籍した銀行員のなかには「来年のはずだったのに」と首をかしげる者や、前倒しで無ポストになったものの、転籍先がなく、「人事部付き」という名目で自宅待機を余儀なくされている者もいる。彼らの中には「自宅待機の扱いが続けば、諦めて自分たちで職探しするだろうと経営陣や人事部は考えているのではないか」と裏読みする向きまで現れている。

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