日本人は「在宅死」の尊さを意外にわかっていない 医療技術に心配は無用、最後は自分の意思で

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Q)在宅治療に大変興味がありますが、病院と比べてクオリティが心配です

A)どのような治療を指しているかにもよるのですが、基本的に病院ではできるけれども家ではできない治療というものはほとんどありません。今は在宅医療を専門に行っている薬局なども出てきているので、本来であれば病院で行うような薬の調製を薬局で行い、在宅に配達することも可能です。よほど特殊な機械を使わなければ生命維持ができないというケースを除き、在宅だからできないことはほとんどないでしょう。在宅に帰れるかどうかを決めるのは、治療よりむしろ「家族が受け入れられるかどうか」がポイントです。

例えば在宅でも点滴はできますが、体に点滴がつながった状態で患者さんが帰ってくることに対して、家族が尻込みしてしまうケースはよくあります。そのようなときに私たち緩和ケアチームは、患者さんにとって本当に必要な医療は何かを考えます。なぜなら病院内ではどうしても濃厚な治療を行いがちですが、終末期のQOLを考えるうえで、どこまでの治療が必要かは患者さんの価値観によって大きく異なるからです。 (西智弘医師)

自宅で医療用麻薬の量を減らせる患者も

Q)がんの痛みは強いと聞くけど、在宅で本当に大丈夫ですか?

A)もちろん大丈夫です。むしろ、自宅へ帰って自由に過ごせることの精神的な効果なのか、病院にいたときよりも医療用麻薬の量を減らせる患者さんもいるくらいです。また、がんの痛みはかなりつらいというイメージがあるかもしれませんが、病気が進行してもそれほど痛みが強く出ない人もいます。2割くらいの患者さんは、末期になっても医療用麻薬は必要ありません。たとえ、かなり強い痛みや息苦しさなどがあっても、緩和ケアの知識と経験のある在宅医や看護師などによるケアを受ければ、自宅で生活できますし、穏やかな最期を迎えることが可能です。

特に、がんの患者さんに対する痛みの軽減については、在宅看取りの実績のある在宅医や訪問看護師の多くが、そのケアの仕方に関する知識や経験を持っていると考えてよいと思います。痛みやつらさは我慢せずに、在宅医や訪問看護師などに伝えるようにしましょう。 (佐々木淳医師)

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