「日本のネット投票」実現が近いと断言できるワケ ハードルは「技術」や「既得権益」ではなかった
このときに検討されたシステムは、投票率が2%以下となる在外邦人や洋上からの投票環境を改善するためという名目で運用が開始された。在外邦人の投票に関しては、元々、郵送での投票を受け付けているため、法的な枠組みとして受け入れやすかったこともある。
とはいえ、選挙人名簿のデータベースをオンラインで管理し、二重投票を防ぐ仕組みなど技術的なハードルはこの時点でもクリアできていた。
言い換えれば、一般投票に関しては法的な枠組みとしてのハードルがあるということだ。
それは自治体ごとに選挙人名簿を管理し、立会人のもとで投票したうえで、各々の選挙管理委員会で開票作業を行わねばならないという現在の法律を見直す必要があるためだ。
実績を積み重ねることで「実現」へ
選挙制度の見直しという、なかなか重いプロセスが必要になってくるわけだが、2018年とは異なる前向きな状況もある。それは若年層の投票率向上に向けての議論が前進していることに加え、コロナ禍での投票環境整備を望む声が高まっているためだ。
2005年からネット投票を行っているエストニアでは、投票の強要対策として締め切り直前まで投票先を変更できる仕組みや、投票行為の匿名性に関するプロトコル、運用などが確立されており、そうした”手順”レベルも含めて日本でも周知は広がっている。
国に国家戦略特区を申請しているつくば市は、筑波大学、茗溪学園がネット投票の「実証事業」という位置づけで、学園の生徒会長を選ぶ選挙のシステムをスマートフォンからの投票で決める実験が10月26日に行われた。
2024年に行われる予定のつくば市長、市議選挙でネット投票を実現させることを想定したものだ。国会でも、立憲民主と国民民主の議員が、2025年の参院選でネット投票を実施するための関連法案を提出しており、継続審議となっている。
投票率が上がると政府与党にとっては不利であり、実現に向けて抵抗するとの見方もあるが、前述したように投票環境整備は自民党政府時代から取り組まれているテーマでもあり、またデジタル庁で検討されている中でも重要な位置付けにある。
集中する投票に対してどのようにシステム的に対応し、選挙管理委員会の独立性を維持しつつスケーラビリティの高いシステムにしていくのかなどは、実際の運用を通して積み重ねていくほかないだろう。
しかしネット投票実現は、与野党などの党派を超えて”必要”と認識されているテーマであり、前に進みつつ、法改正に向けた準備がされていることは確かだ。
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