野間省伸・講談社副社長(日本電子書籍出版社協会代表理事)--紙の本と電子の本を売る力が必要、権利だけの主張は論外だ
──『死ねばいいのに』は紙は1700円で、電子はキャンペーン期間中は700円でした。
価格戦略はまだ実験段階。タイトルごとに変わるかもしれないし、刊行時期によって変わる可能性もある。たとえば電子を先行販売することも考えられるが、いち早く読めるのだから紙より高いという理屈は十分成り立つ。文庫化されるときに電子書籍も刊行するなら、文庫の価格を考慮した値付けになるだろう。
これまで紙の本の値付けはページ数に比例する部分が大きかったが、これを需給で決めることもできる。たくさん売れるから安く、ともいえるし、一方で逆に人気があるから高くても売れる、という考えもある。物理的な制約がない分、さまざまな実験ができる。
──今年内に2万点の電子書籍を刊行する計画ですね。
電子書籍にできるデータとしては6000~7000点をそろえている。コミックが主で、書籍の点数はまだそれには及ばない。まずは既刊本の電子化を進めているが、新刊本も著者の了解を得られれば、同時に電子化を進めたい。もちろん配信できるかはまた別の話だが。
──米国ではグーグルの「グーグルエディション」やアップルの「アイブックストア」など電子書店をIT大手が握りつつあります。
出版社としていちばん避けたいのが、小売りベースでの寡占。それによって表現の自由や言論の自由が失われる危険性がある。その企業の批判本が店に並ばないようでは困る。
電書協が「健全な電子書籍市場を作る」と言っているのはそういうことだ。