「ロングヒットする医療ドラマ」意外すぎる共通点 なぜ事務方は「小悪党」として描かれるのか?

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さて最後に、筆者が実際に体験したお話を……。

筆者は大学卒業後、広告代理店に就職し、営業局に配属。当時は規制緩和により、美容整形外科の広告出稿が解禁されたこともあり、中小の広告代理店はこぞって、美容整形外科医院に営業している時期でもありました。まだ新人営業マンだった筆者も当然の如く、電話や飛び込みによる営業を命じられていたのです。大抵は、けんもほろろな対応でしたが、ある美容外科医院だけが電話の向こうから好反応を示してくれました。

応対してくれたのは事務長で「興味があるので、これから言う住所まで来てほしい」と指示を受けます。その住所どおりに筆者が向かった先は、東京・恵比寿にある、普通のマンションでした。

インターフォンを押すと、出てきたのは派手な服を着た若い女性で「どうぞぉ」と中へ招いてくれます。中に入ると、いくつか部屋があり、少し開いたドアの向こうに若い男が数人、タバコを吸っているのが見えました。

事務長はどう見ても“反社会的勢力”

そして指定された一番の奥の部屋をノックすると、中から「ハイ。ちょっとそこに座って待ってて」という男性の低い声。お言葉どおり、ドアのすぐそばのソファに座って待っていると、しばらくしてスリガラスの間仕切りの向こうから、どう見ても“反社会的勢力”という感じの男性がネコを抱いて登場。

筆者「あ、あの~、○○医院の▲▲事務長さんからのご指示で、こちらへ伺ったのですが……」

男性「ア~、大体は事務長から聞いてるけど、詳しい話、教えてくれる?」

そこから、筆者は明らかに早口で説明を始めたものの、男性はほぼ無表情のまま10分ほど経過。そこへ「すいませ~ん。遅くなりましたぁ」と件の事務長が到着。

「ゴメンなさい。もう一度、頭っから説明してもらえますぅ?」

そう、そこは反社会勢力の方の事務所で、事務長は彼らとズフズフの関係だったわけですね。その後、どうやって話を切り上げたのか、筆者の記憶は曖昧です。

社へ戻り、一部始終を報告すると、「わかった。お前はもうココとは関わるな」と上司が言います。

「マァ、保険医療じゃなくて現金が集まる商売だからなぁ。事務長次第でこういうトコもあるんだよ」

それから数ヵ月後、新聞の記事でこの病院の事務長が背任横領で逮捕されたことを知りました……。美容整形外科医院の名誉のために申し添えておきますが、筆者が数多く営業をかけた中で、こんな病院や事務長はココだけ。もう現在では、こんなところは皆無でしょう。

ただ、事務長は怖い……。その後、医療ドラマを見るたびにいまだそんな偏見がよぎってしまう筆者のトラウマともなりました。

小林 偉 メディア研究家

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こばやし つよし / Tsuyoshi Kobayashi

メディア研究家、放送作家、日本大学芸術学部講師。東京・両国生まれ。日本大学藝術学部放送学科卒業後、広告代理店、出版社を経て、放送作家に転身(日本脚本家連盟所属)。クイズ番組を振り出しに、スポーツ、紀行、トーク、音楽、ドキュメンタリーなど、様々なジャンルのテレビ/ラジオ/配信番組などの構成に携わる。また、ドラマ研究家としても活動し、2014年にはその熱が高じて初のドラマ原案・脚本構成も手掛ける。

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