JT社長、「電子たばこで米国展開考えず」 小泉社長に聞く世界戦略
同社は、従来のたばこのフォーマット以外の新しいたばこのカテゴリーを「エマージングプロダクツ」と位置付け、強化しており、研究開発や投資を振り向けている。小泉社長は「消費者のニーズのあるところ、潜在的なニーズを掘り起こせるならば、たばこという大きな枠組みの中でメーカーがチャレンジしていくのは必定だと思っている」と説明している。
エマージングプロダクツについては、これまでJTとJTインターナショナル(JTI)が共同ヘッドだったものの、今年2月から、マーケットに近いJTIに一元化。責任や権限を明確にしたほか、意思決定を早めた。
シガレット(紙巻きたばこ)ビジネスは、市場リサーチや過去のデータを含めて事前準備をし「考えてから走り出す」事業だったが、エマージングプロダクツ事業は、将来どの程度の事業になるという見通しや、経営資源投入見通しなどは「分からない」ため、「走りながら考える。JTグループの組織が変わっていく、ひとつの大きなきっかけになる」と述べた。
電子たばこはニコチンを含む溶液を加熱、霧状化し吸引するもの。JTが提携によって昨年から販売している電気加熱型のたばこ「プルーム」は、葉たばこを加熱して霧状にして吸引する商品で「パイプたばこ」に分類される。
「エマージングプロダクツ」の今後の展開については「ここまでの買収や提携でスタートアップする知識やノウハウ、技術は学んだ。基本的には自社でやっていきたい。ただし、急に必要となる技術が出てくるかもしれず、提携やM&A含めて、あらゆる選択肢を否定するつもりはない」とした。
ロシア情勢、為替変動含め危機管理モードで注視
小泉社長は「ウクライナ・ロシア問題は、ある種の危機管理モードにあることは事実」としたうえで「情報収集しながら、最悪の事態を念頭に入れ、メーカーとしてできることは手を打っていく」とした。
現時点で、ウクライナ・ロシア両国とも、ビジネスに直接の影響は出ていないものの、有事に備え、原料や製品の在庫を積み増している。
「ボディーブローとして効くいてくるとして危惧している」としたのは、対ドルでのルーブル安。14年度は1ドル=36ルーブルで事業計画を立てている。「14年度は大きく影響することはないが、15年度以降は、何が起きるか分からない。常にウオッチして、必要な手を打っていくしかない」とした。
ロシアの14年のたばこ総市場は8―10%減となる見通しだが、増税や規制強化に加え、ロシアの景況感の悪化や価格競争などの影響がどのように需要に影響するか不透明な面もある。「8―9月がたばこの需要期。ここを過ぎれば年間の着地が見えてくる。14年度はロシアが下振れても他の市場でカバーできる。15年度計画は、9月までの様子を踏まえ、秋口から議論を始める」という。
ロシアは中国に次ぐ、世界第2位のたばこ消費国。JTは、ロシアに2カ所のたばこ製造工場を有しており、シェアは約35%。ロシア内での総販売数量は減少しているものの、増税に伴う数次の値上げが奏功しており、海外事業の柱となっている。
食品や飲料でのM&Aは否定
M&A戦略について、小泉社長は「世界地図を広げると、まだまだ未進出国も弱い国もある。チャレンジすべき市場だと思っている。そのなかでも、アジアやアフリカといった成長性のある市場は、常に注視している市場」とした。
一方、食品・飲料といった非たばこ事業でのM&Aは「今、私の頭の中には全くない」と明言した。M&Aには、大きな目的が必要なほか、買収後の事業戦略が描けていること、被買収側から尊敬され、マネージメントできること、という3つの哲学があるという。このため、同社の非たばこ事業におけるM&Aは、時期尚早との考え方にある。
(清水律子 金昌蘭 編集:宮崎大)
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