「エンタメ」は、ローカル鉄道を救えるか 静岡・大井川鉄道の『トーマス列車』が超人気

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いずれにしろ、こうした動きを見せる鉄道会社とは、おしなべて経営事情が苦しいローカル鉄道。言うまでもなく、人気があるエンターテイメント作品の力を借りて、地域活性化、利用客数増を図ろうということだ。

では、どのような展開になったか。一つの具体例として一畑電車(島根県・電鉄出雲市~松江しんじ湖温泉間、川跡~出雲大社前間、計42.2キロメートル)を見てみよう。

定着した"BATADEN"という愛称

鉄道を舞台とするのみならず、鉄道と鉄道に生きる人々の姿を描き、「日本初の鉄道映画」と称した『RAILWAYS~49歳で電車の運転士になった男の物語』(錦織良成監督・中井貴一主演・2010年5月公開・以下、『RAILWAYS』)は、一畑電車がふんだんに登場する映画だ。

『RAILWAYS』の主人公の実家があると設定された一畑電車の伊野灘駅には、ロケ地の説明看板も取り付けられた

しかし、原案をまとめ、脚本の一部も執筆した錦織監督自身は沿線の平田市(現・出雲市)出身ではあるが、特に鉄道好きということではない。故郷の島根を走る鉄道として、一畑電車に限りない愛着を持っているのだ。

映画自体は、映画情報サイト「シネマトゥデイ」によると、封切り初日2日目の土日だけで動員7万8,367人、興業収入9,071万4,700円の成績を挙げるヒットとなった。そして、鉄道ファンのみならず幅広い支持を受け、主なロケ地としてしばしば登場した伊野灘駅などには観光客が続々と訪れている。平成22(2010)年度の一畑電車の定期券外客(ふつうの乗車券やフリーきっぷなどを買って乗った、おもに沿線住民ではない利用客)は、対前年比5.8%の伸びを見せたのだから、映画の効果は侮れなかった。ただ、その裏で少子化などの影響から通学定期客の減少が著しく、同年度も年間利用客数150万人という目標に対し、輸送実績は141万人に留まっている。

翌年度あたりより、今度は60年ぶりとなる出雲大社の大遷宮が話題となりはじめ、パワースポットブームともあいまって一種の「出雲ブーム」が訪れた。定期券外客の一畑電車利用の動機は、そちらへ移行。利用客数の伸びはさらに続いたが、一畑電車関係者によると、「結局、映画による効果は1年ほどしか続かなかったと、社内では認識されている」という。

「アンパンマン」のように、世代を超えて愛される稀有な大ヒット作でもない限り、次々と新しく生み出されるエンターテイメント作品の波は、旧作をどんどん過去のものとし、観客の記憶の隅へと追いやる。『RAILWAYS』も例外ではない。ここにエンターテイメントに頼る"もろさ"がある。ブームに乗っただけの浮動層は移り気だ。

『RAILWAYS』上映中に運転された一畑電車の「RAILWAYS電車」。 側面には、デハニ50形のイラストが描かれた(現在は別の塗色に変更済み)。映画の後、「BATADEN」という愛称は、地元で定着 

しかしながら、『RAILWAYS』が一畑電車に遺したものも多くある。一つが「BATADEN(ばたでん)」という名前だ。これは『RAILWAYS』の仮タイトルであったが、実は錦織良成監督の造語。決して、一畑電車の略称として昔から地元で使われていた訳ではない。

それが今では、同社自ら公式サイト上などで使用しており、住民の会話でも特に躊躇なく出てくる。クリエーターの思いが、地域の文化に影響を及ぼしたのである。

もう一つが、映画のもう一人の主人公と言われた「デハニ50形電車」だ。昭和初期に造られ、いつスクラップになってもおかしくなかった老朽化した鉄道車両だが、登場人物たちを乗せて『RAILWAYS』の画面を縦横に走り回ったおかげで、保存・活用の対象と見なされるようになり、2両のうち1両が出雲大社前駅で展示。もう1両が、だれでも実際に電車の運転ができるという「体験運転」用となり、一畑電車に利用客と現金収入をもたらしている。

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