恒大創業者、危機脱出に死力尽くすも孤立無援

民からも公からも支援得られず個人資産も急減

中国恒大集団の許家印会長は4年前にはアジア一の富豪の座を馬雲(ジャック・マー)氏と争っていたが、今では資産が急減し、自身の不動産帝国は崩壊の危機にひんしている。

1958年に河南省に生まれ、幼少期に母親を亡くすも、教育を受けて農村部の貧困から抜け出し、世界最大級の不動産会社を設立した許氏にとって、驚くべきどんでん返しだ。以前に問題を抱えた際は、大物の友人や地方政府の支援に頼ることができた。今回は恒大が3050億ドル(約34兆2800億円)の債務を抱え、資産価値も落ち込む状況にあって、かつてないほど孤立無援になっているようだ。

中国の政治エリート層との関わりについて記した著書「レッド・ルーレット」を執筆したデズモンド・シャム(沈棟)氏は「現在の許氏の状況では、政治的なつながりによって救済されることはないと思う」と述べた。

許家印氏 

許氏が自らの帝国を所有し続けるかどうかを含め、今後の状況は不透明だ。盟友の1人で資産家の張近東氏は7月、政府主導の救済を受け、蘇寧易購の支配権を失った。他の破綻した企業の責任者の中には逮捕されたり、死刑判決を受けたりした人もいる。

習近平国家主席が多額の債務を抱えた複合企業の行き過ぎを抑え、住宅市場のリスクを緩和しようと取り組む中で、許氏の帝国は最大の犠牲者となりつつある。恒大とその関連会社はドル建て債発行と株式発行、銀行融資、シャドーファイナンスを積極的に組み合わせることで構築されてきたが、そうした資金調達手段は遮断されたも同然だ。グループは現在、最低でも債務再編に直面しており、その規模は中国で過去最大となる可能性がある。

許氏の古くからの支援者でさえ、忍耐力を失いつつあるのかもしれない。中国不動産業界の大物でポーカー仲間だった劉鑾雄(ジョゼフ・ラウ)氏の一族が率いる華人置業集団は資金引き揚げに動いており、恒大株を全て手放す可能性があると表明した。

ただ、許氏はなおグループのトップにとどまっており、7月に天安門広場で開催された共産党創建100年の記念式典で公に姿を見せた。先月には社員との会議に出席し、売却物件の建設を完了する重要性を強調した。

それでも中国政府の公的支援を得られず、資産が急減する中、許氏は恒大の一部資産の株式売却といった自らの帝国を救う取り組みを強化せざるを得なくなっている。同氏の個人資産は今年に入り150億ドル減少。2017年のピーク時には420億ドルに膨らんでいた。

恒大にコメントを求めたが、すぐには返答を得られなかった。

恒大危機に関するリポートhttps://bloom.bg/3lftF9k (Source: Quicktake)

 

 

深圳の恒大本社 

中国共産党機関紙、人民日報の系列紙である環球時報の胡錫進編集長は先月、ソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」への投稿で、大き過ぎてつぶせない企業はないと考えているとし、恒大は市場で活用できる手段を用いて自社を救済すべきだと論じた。

香港科技大学の新興市場研究所のドナルド・ロー所長は、習主席が資産家を抑制し、国内の貧富の格差を縮めようとしている時期に大規模な救済を行えば間違ったメッセージを送ることになると指摘。

「恒大の救助はモラルハザードを生み出し、同社のような債務漬け企業が増える可能性を高めるだけでなく、恐らく最も重要なのは、救済が富裕層への大規模な補助金と見なされ、共同富裕を推進する習主席の取り組みを損なうことだ」との見方を示した。

原題:Evergrande’s Audacious Founder Hunts for a Way Out of Crisis(抜粋)

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著者:Bloomberg News

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