首都圏大地震、「海に近い路線」津波対策は万全か 鶴見線の避難どうする、満員状態の訓練も必要

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この場合の情報収集とは、「指令に確認、携帯ラジオ、タブレット端末、地域の防災無線、お客様より情報を知得などあらゆる手段を活用します。当社では『JR東日本津波避難ナビ』というアプリを開発して、乗務員はタブレット端末にダウンロードし携帯しております。このアプリを確認することで、自身の現在位置、最寄りの避難場所などがわかる仕組みになっています」という。

では、避難が必要と乗務員が判断した場合はどうなるか。JRの回答は次の通りだ。

「指令に連絡してお客様に降車していただきます。もしも通信が途絶し、大津波警報が出ている場合などでは、乗務員判断ですみやかにそれを行います。列車からは、はしごによる降車または、はしごを使用しない方法(ドア縁に座って降車)で降車し、その後乗務員が避難場所へ避難誘導します」

海芝浦駅など、避難場所が遠くにしかない付近を走行中や、海芝浦駅で出発を待っている間に津波警報などが出たらどうなるか。

鶴見線に限らず、津波注意区間内の各駅に掲示されている前述の「津波避難地図」で示された避難場所は、行政が指定している場所を基本としているという。

「海芝浦駅や新芝浦駅は、指定避難場所(入船小学校)に避難誘導するより、工場の建屋に避難したほうが所要時間が短いことは、乗務員も理解しています。状況判断により工場建屋に避難することもあります」

また同線の無人駅では、運行管理する区所から遠隔で駅構内に放送を流せるようになっているという。

どうやって車両から線路に降りる?

もう1つの課題は、大地震発生で停車してから、乗客全員が車両から線路へと降り終えるまでを、いかに安全に、かつ短時間でできるかである。

2019年9月、JR東日本では、浅野―新芝浦―海芝浦で鶴見線の車両2編成を使用して「津波を想定した避難誘導訓練」を実施した。地元でも関心が深いようで、JR東日本社員、沿線企業の社員、周辺の中学高校の生徒ら計約700人が参加した様子をメディア(『神奈川新聞』)が伝えている。

同訓練では、通常の車内放送により降車して避難した電車と、迅速な車内放送により避難した電車で、避難時間の差の検証も行われた。

それによれば、発災から降車完了まで、通常の車内放送では約12分、迅速な車内放送では約5分と大きな差が出ている。

迅速な車内放送(一例)とは、以下のようなものである。

「地震により津波が来ます。3・2・1の合図で○○側のドアを開けますので、ドアの縁に腰かけ降りてください。相互に協力してください。降車後は乗務員に続いて、避難してください」

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