iPhone熱狂の裏で進むアップル“閉鎖”主義
もともと2007年発売のiPhone初代機からFlash対応していなかったが、業界では将来的な対応が見込まれていた。ところが、今年発表のiPadやiPhone4もFlashへの対応はなかった。
それでもアドビは昨年10月に、Flashを使ったアプリをiPhone用に「変換」できるソフトを配布し、何とか食い込もうとしてきた。だが今年4月、その道も絶たれる。アップルが新OSの開発規約を変更し、事実上同社のソフトなどアップルが承認する以外の他社ソフトが使えなくなってしまったのだ。
さらに4月下旬には、アップルのスティーブ・ジョブズCEOが公開書簡でFlashの技術的弱点などを理由に“訣別”を宣言。Flashの代替として次世代開発言語「HTML5」を強く推す。
対するアドビは「開発者の選択を狭める」として対抗キャンペーンを展開。同時にアンドロイドなど競合端末でのFlash搭載を始めるなど、対抗姿勢を強めている。
過去にはアップルがアドビに出資していたこともあるなど、両社は長年に渡って友好的な関係を築いてきた。依然、アドビにとってアップルの「Mac」ユーザーは主要顧客なだけに、アドビがアップルに対抗するのは複雑な思いがあるに違いない。
それでも、アドビのテクニカルエバンジェリストの太田禎一氏は、アップルが特定技術を開発者に要求することで「開発者が(アプリなどを)オープンに色々なプラットフォームに出せなくなる」と、苛立ちを隠さない。
もとよりアップルは「アプリを開発するうえでの規約や審査が厳しい」(IT企業幹部)とされ、開発者にとってハードルの高いところがあった。加えて「ジョブズ氏の意向によって一晩で開発規約が変わり、自分のアプリが使えなくなる可能性があるのは開発者にとって脅威的だ」(同)ともされる。