任天堂がWiiUの手痛い失敗から得た勝利の方程式 バランスなき理想追求には誰もついてこない

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Nintendo Switchの大ヒットも学びがあってこそ(撮影:前野裕香)
あの大企業の新規事業はなぜ失敗に終わったのか。世界有数の企業20社の製品・サービスの事例を分析した新著『世界「失敗」製品図鑑』を上梓した荒木博行氏が全3回で3社のケースを読み解きます。
第1回は「任天堂/Wii U」編。任天堂史上2番目に売れなかった家庭用ゲーム機となってしまったWii U。身体レベルの没入感を実現しながら、プレイステーションやXboxら競合に敗れてしまいました。その道のりから、私たちが学ぶべき教訓とは?(本稿は新刊の一部を再編集したものです)。

最新テクノロジーを搭載した大ヒット機Wiiの後継機

2011年6月、任天堂は新しいゲーム機Wii U(ウィー・ユー)の全貌を公表しました。その特徴は、液晶画面を搭載したタブレット端末のような専用コントローラー「Wii Uゲームパッド」にありました。テレビとゲームパッドという2画面を同時に活用することにより、今までにない身体的な動きを伴うゲーム体験を実現しようとしたのです。

この他にも任天堂は、カメラ、マイク、スピーカー、タッチペン、そしてHD画質対応などハードウェア面での充実をアピールしました。発表に際して、岩田聡社長(当時)は、「(Wii U上での遊び方に関する)新しいアイデアが次から次へと浮かんでくる」と自信を見せていました。

Wii Uの発売当時、任天堂は苦境に立っていました。2006年に発売された第1世代の「Wii」(ウィー)は家庭用ゲーム機で久々の大ヒット商品となりましたが、やがて売り上げは減速。2011年2月に投入した「ニンテンドー3DS」も低迷し、2011年3月期連結決算では大幅な減収減益に落ち込みました。この難局の打開策こそが、Wiiの後継機であるWii Uでした。

しかし、ゲームを取り巻く環境はWii投入の時代から大きく変わっていました。「モバゲー」「グリー」といったスマートフォン上で展開されるソーシャルゲームが台頭する中で、「ゲームのためにわざわざハードウェアを買う必要があるのか」という新たな問いに向き合う必要があったのです。

その問いに対して、任天堂は「Better Together(一緒はよりよい)」というコンセプトを提示します。

「スマートフォンの台頭により、家庭内は同じ屋根の下に一緒にいるもののやっていることは別々という『Alone Together(一緒でも孤独)』状態になっている。しかし、Wii Uを使えば、同じゲームを通じてもう一度家族が一体になることができる」。このようにWii Uを位置づけ、Wiiが獲得したファミリー層を維持することを狙います。

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