アクショーノフさんが診察した外国人は、大金持ちから貧しい人まで千差万別である。肌の色も、国籍も、宗教も様々である。中には、国際的な有名人もたくさんいるが、その中でもスーパースターと呼べるのは、歌手のマイケル・ジャクソンと、歌手としても女優としても世界的に知られているマドンナだろう。
アクショーノフさんにとって、もっとも印象的な出会いだったのは、往年の西部劇スター、ジョン・ウエインだ。1970年の秋雨が降る夜、クリニックで帰宅する用意をしていると、診察室の電話がけたたましく鳴った。
受話器をとると、相手は「私はジョン・ウエインだ」と言った。いたずら電話だと思い、「私はナポレオンだ」と答えようとした。聞いてみると、ジョン・ウエインは映画「黒船」の撮影のため静岡県下田市に来ていて、額を虫に刺されて化膿して目が見えなくなったという。そのうえ、40度もの熱が出ているので助けて欲しいということだった。
ジョン・ウエインは臆病だった
アクショーノフさんはすぐにジョン・ウエインが泊まっている静岡県伊東市のホテルに出かけていった。診察してみるとたいしたことはなく、簡単な切開手術で済みそうだった。ところが、ジョン・ウエインは「ドクター、私は臆病で手術が怖い。麻酔で眠らせてから手術をやって欲しい」と懇願した。
ジョン・ウエインのイメージは荒野で激しく立ち回る、男の中の男、というものだったので、アクショーノフさんは「イメージとはだいぶ違うなと思った」と筆者に明かした。ジョン・ウエインはアクショーノフさんに大変感謝し、2年後に来日したとき、ホテル・オークラで母や妻まで招待してご馳走してくれたという。
クリニックを訪れた有名人の中には、世界に知られた政治家や経営者も少なくない。フランス大統領を務めたジャック・シラク氏もその一人だ。
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