「助けて」娘の不登校で追い詰められた夫婦の決断 つらい状況を「認めたくない」では改善しない

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 娘さんの自宅学習の一部。体調がいいときだけ勉強するようにして、通信教育、学校からのプリント、自作プリントを娘さんの体調や学力に合わせた形でTさんが用意した。子どものモチベーション維持のため、勉強した学校プリントは必ず先生のフィードバックをもらえるようにも手配。復学した今も、塾に通う体力はないので、遅れた勉強フォローは自宅で行っている

今回取材してわかったのは、子どもの不登校がどれだけ親の生活や心身に影響を及ぼすかということ。

このご家庭の場合、娘さんは学校に行きたいという強い気持ちがありながらも症状は一進一退を繰り返し、一時期は主治医に「復学が高校からになる可能性もある」と言われたそうです。

幸い、中学から復学できましたが、当時は夫婦ともに相当なショックを受けたそうです。そんな生活の中、妻のTさんは、喘息や偏頭痛は悪化し、さらにADHDまで発覚しました。実は、子どもの治療にむきあっているうちに、自身の病気も発覚するというのもしばしば聞く話なのです。

認め、受け入れることで救われた

一方で、Tさんは医者に「コミュニケーションが苦手なタイプ」と言われて、ほっとした部分もあったそうです。

かつては、しっかりしたママたちのように自分ができないことや、人間関係や連絡作業に疲れてしまうことに落ち込んでいたTさん。「でも苦手なことなんだからしょうがないんだ」と思えることでかなり救われたとか。さらにコロナ禍になり、周囲との対面つきあいが減ったことで、周りと比較することが減ったのも精神面ではいい効果があったといいます。

とはいえ、病気のオンパレード状態で日々の家事育児をこなすのは大変なこと。このご家庭はそこを自分たちだけで頑張るのではなく、周りにとにかく助けを求めることで乗り切ってきました。不登校問題に悩む人は多いので、親の会や自治体のサポートなどもたくさんあります。まずは勇気を出して周りに助けを求めるのが大事なんだな、と今回の取材で実感したのです。

ちなみに、このご夫婦は助けの求め方にも工夫をしています。病気についての理解は難しいので、娘さんの学校では5者面談(担任、校長、教頭、ご夫婦)を毎年お願いしているそうです。

面談では病歴と主治医の意見を書いたものを全員分コピーし、夫Nさんがプレゼン。おかげで学校はずっと全面協力体制なのだとか。面談は必ず夫婦で行き、学校対応が片方に負担がかからないようにも気をつけているそうです。このすべての行程に大切なポイントが詰まっていると感じました。

というわけで、今回のつかれないヒントは……

不登校の子どものケアにつかれた

あらゆるところに助けを求めよう。
不登校は親もつかれるのが当たり前。
子どものケアはもちろん、自分のケアもしてくれるところを確保するのが大事。

さて、次回はこの夫婦の家事育児分担の詳細、さらにそのストレス発散方法を紹介します。

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。
ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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