住宅ローン契約後に「生保が不要か」試算する方法 「35年後の自宅の資産価値」を予想しておく意義

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生命保険の見直しと言っても、どうすればいいか分からないかもしれない。そこで、ネット生命保険会社の見積もりで見直し方法を試算してみた。保険金3000万円なら、月保険料2万円程度だった。自宅マンションが資産として充分に残せるなら、これは解約してしまえば、35年間で2万円×12カ月×35年=840万円のキャッシュアウトを防止することができる。冒頭の方がやった方法だ。ちなみに、冒頭の方は儲かる確率が90%で年間下落率が0%、つまり何年住んでも下がらない場所で購入している。

その一方で、35年後に自宅を売っても1000万円にしかならないなら、もしもの時に自宅を売却することが有効な手段にはならない(自宅保有がリスクヘッジにはならない)。そんな方は、保障を下げるわけにはいかないかもしれない。そこまで理解したら、資産性が高い物件を検討した方がいい。物件価格が安くても、資産性の高い場所は存在するものだ。

マンションを買うことの意味

 マンションを買うことは「生命保険の代わり」でもある。家族のためにという気持ちが少しでもあるのなら、保険の見直しは必須なのだ。結果として今の保障を継続するという決断をするにしても、保険の見直しはするに値する。それは自宅の資産性、生命保険の最適化をすることになるし、家族の中で「もしもの時」どうするかを共有できるからだ。

ここで、最後に問題になるのは、日本ではこうした相談をすべき相手がいないことだ。端的に言って、これはFP(ファイナンシャルプランナー)の仕事であり、FPの教科書の1/3は不動産と相続に割り振られている。

しかし、誰もが必要な自宅の資産性について、不動産コンサルタントの私から見れば、FPの人は非常に疎い。税理士だって同じことだ。マンションと戸建ての資産性の違いや立地・物件属性による資産性の違いや物件価格が高いのか安いのかを判断する根拠を持たずして資産管理の最適化などできはしない。

マイホーム投資で成功する人を増やすためには、「自宅の資産性」リテラシーの高いFPや税理士が増えることも重要だと感じている。

沖 有人 不動産コンサルタント

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おき ゆうじん / Yujin Oki

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人系・不動産系のコンサルティング会社を経て、1998年に現スタイルアクトを設立。住宅分野において、マーケティング・統計・ITの3分野を統合し、日本最大級の不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティング・事業構築を得意とする。設立当初から運営する分譲マンション価格情報サイト「住まいサーフィン」の会員数は30万人以上。『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』(朝日新書)など著書多数。

 

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