日本郵船の株主総会で工藤社長は大型バラ積み船の積極投資に突然言及。名誉会長職への疑問が飛び出したほか、社外取締役2人の発言も。挙手による採決は即時却下
会場からの最初の質問は客船事業について。外資系客船会社が日本郵船の4分の1の価格で集客していることを指摘した。客船担当の加藤正博専務は、「客船市場にはラグジュアリー、プレミアム、マスの3つがある。ご指摘の船はマスで、飛鳥は和の最高のおもてなしをしている。ご指摘の船は入門編を果たしていただけるのかなと思っている。飛鳥の方針は変更していない」と回答した。
次の質問は昨秋の公募増資と子会社数の多さ。「4割近い希薄化の公募増資は妥当だったか。増資の前に役員や社員のボーナスカットや不良債権・不稼動資産の処分をするのが妥当ではないか。社外取締役はどんな意見を言ったか。同じような子会社がいっぱいある。日本郵船が赤字なのだから子会社を売却してするなどの今後の取り組みについて説明してほしい」というもの。工藤社長は「短期的に希薄化し迷惑をかけたが、将来の成長のために必要と判断した。中国、インドでの回復が早く積極投資しないといけない。10~13年度に160隻、1兆2000億円の投資を決めている。うち150隻が不定期船で、3分の2を四国の船主にお買い上げいただくが、3分の1は自社で保有する予定だが、海運市況が低迷しているなかで本当にお持ちいただけるだろうかという不安があった。現在は市況が急回復しているが、当時は500億円強のコンテナ船部門の赤字や150億円のNCAの赤字が次期も継続する可能性があった。役員賞与をカットしている一方、土地や株は時価との見合いや売却のタイミングの問題もある。ただ大半は顧客の株。社外取締役がどんな意見を言ったのかは、全役員で決めたことなので、内容の開示は不要かと思う」と答えた。
子会社数については担当の内藤忠顕専務が、「400社は船保有のペーパーカンパニー。保険の関係で1船1社ある。エグジット・ルールで3期連続赤字や債務超過会社は管理強化会社とし、再建計画を見て妥当なら継続、そうでないなら撤退・統合・清算の道を選んでいる」と回答した。
3番目の質問は環境船構想「エコシップ2030」とエコポイント導入について。「エコシップは建造費が1000億円かかると聞いた。これではさらに株価が下がるのではないか。コストマインドの強い荷主は建造費を払ってくれないのではないか、またエコポイントなどのインセンティブプランを導入してはどうか」というのもの。
工藤社長は「今建造すると1000億円で、30年までに技術革新が進み50億円になると聞いている。構想はみんなで一緒にやっていきませんかという業界への呼びかけの意味合いもある。インセンティブプランは自動車船ですでにやっている。2割減速すると燃料費が5割減。1トン500ドルを前提で1隻・1日当たり300万円かかる燃料代が150万円になる。このメリットを半分どうぞと顧客に返している。この営業戦略を今後も取る」と応じた。