『孤高のメス』--今の日本経済に必要な“真摯さ”を描く《宿輪純一のシネマ経済学》


 とても良くできた映画である。特に脚本がすばらしく、流れに無理がない。多分、日本のいくつかの映画賞を受賞すると確信している。筆者はシカゴに駐在していたこともあり、シカゴがロケ地である米国の医療ドラマ『ER』のファンであるが、手術のシーンは『ER』と同様、たいへんリアルである。しかし、映像や演出自体は抑えめで、色彩も派手ではない。そのためか公開館も少なめに感じる。

原作は『ビジネスジャンプ』に1989年から4年間連載されていた『メスよ輝け!!』で、その後、原作者の高山路爛(本名:大鐘稔彦)が『孤高のメス−外科医 当麻鉄彦』として小説にまとめた。

地方の港町にある市民病院に、外科医の当麻鉄彦(堤真一)が赴任する。その病院は、ある大学病院に依存しきって、事なかれ主義で無気力が蔓延していた。

そのような劣化した体制の中でも、当麻先生は目の前にいる患者を救うことにのみに全身全霊を注ぐという信念を曲げない。そのためにはできるだけのことをする。

当然のことながら、大学病院から送り込まれた、事なかれ主義かつ保身主義の体制派とは対立するが、ものともしない。

そんな中、市民病院の支援者である市長が肝硬変で倒れる。この頃は、法律ではまだ認められていない脳死肝移植手術を実行しようとする。患者を何としても助けたいという気持ちのない、抵抗勢力の体制派は一斉につけ込んでいく。

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