実刑確定、池袋暴走「上級国民」裁判に残る違和感 なぜこの事故ばかり大きく騒がれたのか

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事故は2018年2月、東京都渋谷区の路上で起きた。石川達紘元東京地検特捜部長(82)はこの日、ゴルフに向かう女性と待ち合わせをしていた。乗用車を止めて降りようとしたところが、愛車は急発進して時速100キロを超す速度で約320メートル暴走。歩道にいた自営業の男性(当時37)をはねて死亡させたうえ、その先にあった店舗兼住宅に突っ込んでいる。

ところが、こちらもその場で逮捕されるようなことはなかった。それから時間を置いて書類送検され、在宅起訴された。ただしこの事故は死者1人で負傷者もなかったことから、同じ自動車運転処罰法違反でも過失運転致死だった。

ロッキード事件などに携わったエリート

石川達紘被告といえば法曹界での経歴は特筆に値する。検事としてロッキード事件などの捜査に携わり、1989年には東京地検特捜部長に就任。ゼネコン汚職など数多くの有名事件を手掛けて、名古屋高検検事長を最後に退官。2001年に弁護士登録すると、さまざまな企業の取締役を務めてきた。飯塚被告と同様に2009年には瑞宝重光章を受章している。

しかも、飯塚元被告がトヨタ自動車のプリウスで暴走したのなら、石川被告が運転していたのは同じトヨタでも高級車レクサスだった。こちらも「誤ってアクセルペダルを踏み続けた」と主張する検察側に対し、「天地神明に誓って踏んでいない」とまで断言して、車の不具合による無罪を主張している。どちらの裁判でも、トヨタ関係者らが証人として出廷し、車の不具合のなかったことを証言しなければならなかったことも共通する。

今年2月15日、東京地裁は石川被告の主張を退け、「被告が誤ってアクセルペダルを踏み込んだ」と認定して、禁錮3年の有罪判決を言い渡している。アクセルペダルの裏側に踏み込んだ痕跡があったこと、車の操作状況を示すレコーダーにもアクセルペダルを踏んだ記録があることを指摘して、「車の不具合が存在した現実的可能性は見当たらない」とした。ただし、執行猶予5年が付いた。実刑ではない。それでも石川被告はこの判決を不服として、即日控訴している。

次ページ飯塚元被告の検察による求刑は法定刑の上限
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