カローラの販売実績、知られざる車種別の内訳 ワゴンが最も売れているが併売の先代も根強い

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そして、アクシオとフィールダーも、古い仕様のまま販売を続けているわけではなく、9月に入って、プリクラッシュセーフティに昼間の歩行者検知機能を備えた危険回避機能を追加し、また屋外の明るさの変化で自動的にライトを点灯/消灯する装備をそれぞれ標準化した。新車販売の約3割を占める顧客に対する機能の充実も手を抜いていないといえる。

(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

そのほか、ガソリンエンジン車では、グレードの選択肢はないものの、5速マニュアルシフトとCVT(ベルト式無段変速機)を選ぶことができる。1~8月の集計で300台超と数は少ないが5MTが販売されている。

カローラにも、ガソリンエンジン車の4ドアセダン、スポーツ、ツーリングそれぞれに6速MTがあり、1~8月での集計で10%に満たないが、存続している。

4輪駆動車の設定も、アクシオとフィールダー、そしてカローラスポーツではガソリンエンジン車に、4ドアセダンとツーリングはHVに設定されており、1~8月での集計で15%弱となっている。

SUV「カローラクロス」が追加

以上みてきたように、カローラ販売の内訳をみると、長い歴史のなかで多様な顧客像が浮かび上がり、台数比率の大小を問わず、既納客の存在を忘れることなく車種を設定し、そのうえで、3ナンバーとなった新しいカローラとツーリングによって新規の顧客も開拓しているのではないかと想像させる。

自動車メーカーにとっては何万台売れるかという思惑になるかもしれない。だが、販売店にとっては、一人ひとりの顧客に購入してもらえるかどうかの積み上げで、結果的に何百台、何千台につながっていく意識であるはずだ。自動車メーカーのトヨタが、販売店の永年の努力に対し、伝統的なカローラでは過去の実績を無にしない開発や、前型を併売することにより、モデルチェンジから2年を経てなお自販連のベスト5位前後を堅持できるのだという実情が明らかになってくる。

(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

ここにきて、今年9月にSUV(スポーツ多目的車)のカローラクロスが新たに加わった。ヤリスが、ヤリスクロスとGRヤリスを販売台数に含めるように、カローラクロスが加わると、カローラの車名で月販1位を奪還するかもしれない。このあたりは近く配信予定の別稿で解説したい。

カローラというブランドの存続はもちろん、多様な選択肢を維持し続けられるのも、トヨタならではのことだろう。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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