中部電力、東電火力提携の有力候補に 不透明な自由化への影響
[東京 18日 ロイター] - 東京電力<9501.T>が経営再建の柱に掲げる火力発電事業の包括提携候補として、中部電力<9502.T>が有力視されている。火力発電の設備更新資金の確保などを求める東電にとって、中電は財務体質が傷んでおらず、LNG(液化天然ガス)の共同調達などを進めやすい。
この提携により、中部電が首都圏の電力供給に競争原理を持ち込むのか、あるいは東電に取り込まれる結果に終わるか、電力自由化の行方を占うひとつの試金石ともなる。
包括提携、資金不足の窮余の策
東電の火力包括提携は、1月に政府が認定した同社の再建計画(総合特別事業計画)の柱の一つ。提携相手と合弁会社を設立して、LNG(液化天然ガス)の調達から発電まで火力発電の全事業領域を共同で手掛ける方針を示している。
同社では原発に依存してきた結果、火力発電設備の更新が進まず、運転開始から50年前後という老朽設備が少なくない。しかし、福島第1原発事故により実質国有化されたため、古い火力の建て替えに充てる資金がない。他企業との包括提携はそうした事情を反映した東電としては窮余の策といえる。
東電は、中部電のほか、東京ガス<9531.T>、関西電力<9503.T>、大阪ガス<9532.T>、JXホールディングス<5020.T>の5社と提携交渉を進めているが、関係筋によると中部電が有力だという。
中部電、東電の代役に意欲
同関係筋は「水野明久社長ら中部電力の現経営陣は、東電が首都圏の安定供給の役割を果たせないなら、中部電がその役割を担うしかないと腹を括っていた」と話す。
中部電は、製造業が盛んな東海地方を営業区域とし、トヨタ自動車<7203.T>をはじめ有力顧客を多く抱える。しかし、製造業の海外生産の増加や省エネルギーの進展、人口減少などの要因で、いずれ電力需要の減退に直面するという事情は、他の地方電力と共通する。
原発依存度がもともと低い(06年─10年度平均15.8%)ことから、中部電力は原発が停止長期化する中でも、関西電など原発依存度が高い同業他社に比べ、財務体質の傷み具合が軽く済んでいる。
大阪ガスと組んで米国産シェールガスの輸入許可について国内で一番乗りを果たすなど、中部電の火力分野での先進的な取り組みには定評がある。中部電のLNGの年間調達量は東電に次いで国内2位。東電が火力分野での提携先で有力候補と考える要素は少なくない。