中部電力、東電火力提携の有力候補に 不透明な自由化への影響

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政府は、家庭向けを含めた電力小売り全面自由化(2016年)、発電事業と送配電事業を別会社にする発送電分離(18─20年)など電力システム改革を段階的に進める方針だ。

中部電力が東電と火力分野で提携することで、首都圏における中部電の存在感が増し、競争促進の起爆剤となるのか。国のエネルギー政策議論に参加する一橋大学大学院の橘川武郎教授は、ロイターの取材に「具体的な条件でだいぶ変わる」と述べた。

「(東電の)柏崎刈羽原発(新潟県)が再稼動しない場合、中部電力が東電の(火力)発電所を買い取って、東京に進出するというのが一つの流れだ。もう一つのシナリオは、包括提携を通じて、中部電の勢いを東電が取り込んでしまうことだ」と橘川教授は語った。

東電は、柏崎刈羽原発は今年7月から順次再稼動するという前提で収支計画を立てているが、すでに大幅に遅れている。新潟県の泉田裕彦知事は柏崎刈羽の再稼動に厳しい姿勢を崩さず、福島第1原発では汚染水への対応に依然として苦戦するなど、東電の原発再稼動に対する国民の目は厳しい状況にある。

橘川教授は、柏崎刈羽の再稼動について「イリュージョン(幻想)だと思う」と指摘した上で、中部電の悩みどころは二つあると解説する。「包括提携に乗らないと、東京ガスなど(提携の好機を)他社に持っていかれる点がひとつ。もう一つが、柏崎刈羽はやがては動く、という東電の(強気の)態度だ。柏崎刈羽のイリュージョンが生きているなかで、中部電力にプレッシャーがかかっている」と同教授は語る。

大手電力同士の提携は望ましいのか

電力市場は、2000年3月から工場など大口需要家に対象を限定して小売りが自由化されたが、営業区域を越えた大手電力による供給の実例はわずか1件止まり。経産省の電力システム改革の担当者は「大手電力同士の競争進展がシステム改革の成否を握る」と述べるが、電力業界に根強い競争忌避の体質が簡単に改まるのか。

政府の電力システム改革に関する議論に参加した富士通総研経済研究所の高橋洋・主任研究員はロイターの取材に対し、「東京電力と中部電力が提携することは好ましいことではない」と指摘した。

その上で高橋氏は、「単なる業務提携だから問題ないのか、これまでの電力市場の競争に鑑みて、(提携案が)競争阻害ではないのか。独占禁止法の対象として判断すべきだ」と語った。

 

(浜田健太郎 編集:北松克朗)

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