"役に立たない"基礎科学が大事なワケ 基礎研究、応用研究、開発研究の関係

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「役立つ」という言葉が厄介なのは、「将来はわからない」という意味をこめて「将来は○○に役立つかもしれません」という言葉で多用されることです。こうした使い方は、「それって本当?」と疑われることも少なくないのです。役立つなんて言わなければ、十分応援したいのに、わざわざ役立つことを主張して信頼を落としている分野も少なからずあるように思います。

基礎・応用・開発研究の分類

さて、もう少し整理していくと、いわゆる科学的価値は高くとも将来の経済的価値の見込みが未知数な研究のことを「基礎研究」と呼びます。多くの成果が基礎研究を基盤にして生まれていること、さらに、近年は積極的に応用科学とつながりを持ち始めているのことから、これを「役立たない」科学としてまとめるのは危険です。基礎科学の特徴は、市場を意識せず、研究者の自由な発想で進展していくことです。このような活動ができるのはごく限られた国であり、その国の文化度の高さを示すバロメーターのような存在でもあります。

一方で、市場に出ることを見込んだ、役立つ研究が「応用研究」といえます。大学の中で言うと、理学部は基礎研究を主にしており、工学部や薬学部は応用研究を主にしています。しかし近年は、特に生物や化学の一部分野では基礎研究と応用研究が非常に近く渾然一体となっている分野もあります。そのため、昇進の度に基礎系の理学部と応用系の学部を行き来する研究者も少なくありません。もうひとつの「開発研究」は、主に企業で行われ、数年という短いスパンで市場に出ていく研究を指します。

OECDは早くから科学を、基礎研究、応用研究、開発研究と3つに分類しており日本でも1967年にはこうした分類が総務省の報告で使われていました。応用から開発研究がうまくいけば市場に向けて一続きにつながるのに対し、基礎研究はとりあえず、そこから分離されています。基礎研究、基礎科学はいわゆる「科学のための科学」、科学者の純粋に科学的好奇心から探求する研究を指します。

いま見ている科学が、基礎研究なのか、あるいは市場を目指す応用研究、開発研究なのかを整理すると、科学の外観がすっと捉えやすくなるはずです。

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