"役に立たない"基礎科学が大事なワケ 基礎研究、応用研究、開発研究の関係

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もちろん、超新星爆発からのニュートリノを捉えた、という科学は、人類の叡智をさらに高めるものであり、素晴らしい成果です。そして研究者がこの素粒子を追い求めるのも、そこにそれだけの科学的な価値があるからです。「面白い!すごい!」といった研究者の感動が、こうした価値には伴います。聞いている高校生も、そうか、そういうことかと納得するのです。しかしこの「科学的価値」が、すぐに社会の明日に役立つわけではない。このあたりが、難しいところです。

難しい「役立つ」という言葉

「役立つ」という言葉自体、もう少し踏み込んで考える必要があります。この言葉は「この成果は○○の開発に大きな進展を与え、3年以内に製品として市場に出すことができる」といった、経済価値に置き換えて使われることが多く、「将来、何かの役に立ちます」とは、このような可能性を示唆する言葉になってしまいます。たしかに何かが見つかったとき、それがどれだけ将来にインパクトを与えるものかはわからない。100年後に大きな進展があり、何かに役立つことがないとは言えないかもしれません。

しかし、現代の科学は、分野によるとはいえ、もう少し事情が異なります。体系的に研究がされるようになって、どのあたりが「役立つか」が、全体的に見えやすくなったという事実もあります。あるいは「役立たないのか」がわかることもあるわけです。

さらにもう少し幅を広げてみると、研究者が価値あると思う科学の成果は、経済的に役立つか役立たないかは別にして、学術の成果を着実に積み重ねる「科学的価値」が確実にあるので、学術の進展に「役立つ」と言うこともできます。

かつてアメリカのフェルミラボの所長であったウィルソンが、素粒子分野の研究のために、大きな加速器を作りたいと提案しました。1969年に議会に呼ばれた彼は「それは国防に役立つのか?」と質問されます。ウィルソンは「国防には直接役立ちませんが、我が国を守るに値する国にするのに役立ちます」と答え、科学者の心を奮い立たせました。そして完成したのが、テバトロンと呼ばれる当時の代表的な加速器です。今の時代にはおそらく通用しない冷戦下ならではの言葉ですが、非常に上手な返し方をしたわけです。

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