検証!不動産の巨人「恒大」巡る悪夢のシナリオ 中国政府は「リーマン危機」の再来を防げるか
中国恒大集団への抗議活動が中国全土で行われている。極めて深刻な資金難に陥っている同社の資産運用商品を購入した7万人を超える投資家が損失や償還遅延に見舞われており、各地の同社オフィス前では抗議活動が繰り広げられている。恒大が関与する住宅の建設も止まりつつあり、100万人余りの購入者は途方にくれるばかりだ。
中国恒大巡る危機、新たな火種は満期の理財商品-抗議活動続く
恒大危機のあおりを受け、ただでさえ不安定だった不動産市場では投げ売りも見られ、同社以外の不動産開発会社も苦境に立たされている。その影響は中国国内総生産(GDP)の25%超を占めるサプライチェーン全体へと波及しつつある。新型コロナウイルス禍の中で消費者の買い控えが強まり、習近平国家主席が国民生活の向上を目指す政治的にも微妙な移行期に国民の不満が高まるリスクが強まっている。
信用市場の圧力は低格付けの不動産会社から、より大手の同業や銀行へと広がっている。今年6月までの1年3カ月で中国の株式・債券を計5270億ドル(約58兆円)購入した世界の投資家はこうした資産を手放し始めている。
恒大の下方スパイラルを中国政府が容認した場合、どうなるかを正確に予測するのは不可能だが、中国ウオッチャーらは共産党がどの程度の痛みを許容するかを踏まえつつ、最悪のシナリオを検証している。危機波及リスクの兆候が増す中で、介入圧力は高まっている。
中国恒大の債務、75%減免が債券アナリストの基本シナリオ
北京の投資銀行、香頌資本の沈萌ディレクターは「金融システムにとって重要なデベロッパーである恒大が破綻した場合、不動産セクター全体が問題に直面する」と予想。「債権者が債権回収に乗り出せば資産の投げ売りにつながるほか、住宅価格は打撃を受ける。サプライチェーン全体の利益率は圧迫され、資本市場でのパニック売りも招くだろう」と分析した。
現時点では沈氏を含め、取材に応じたバンカーやアナリスト、投資家のほぼ全員が中国政府は「リーマン危機」の再発を許すつもりはなく、恒大の債務3000億ドル相当の再編に当局が取り組み、システミックリスクを最小限にとどめるだろうとみている。
市場も同じ見解を示しているようで、上海総合指数は13日に6年ぶり高値を付けた後、3%未満の下げにとどまり、人民元は対ドルで3カ月ぶりの高値付近となっている。
しかし当局が介入しても問題が解決しない可能性もある。2016年1月に起きた中国株急落の際の対応失敗は、政策当局による金融市場のコントロールがいかに難しいかを如実に示した。
習主席がどの段階で行動に踏み切るかは引き続き不透明だ。金融当局は恒大創業者の許家印氏に対し債務問題の解決を迫ったが、当局はまだ政府が大型債務再編ないし破綻を容認するかどうかについて詳しく説明していない。
中国恒大は債務問題解決し「虚偽」情報の流布停止を-当局が叱責
また中国政府は必要なら民間企業を管理下に置くことを否定していない。中国人民銀行(中央銀行)と銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は19年5月、包商銀行の公的管理に踏み切った。
中国政府が最終的に恒大をどう扱うかは、習主席が社会と金融の安定維持という目標とモラルハザード(倫理観の欠如)のバランスをどう取るかで決まる可能性がある。
中国は現在、経済成長減速や民間セクターに対する広範な締め付け、米国との緊張の高まりといった課題を抱えている。さらに習主席が共産党総書記としての3期目を目指す5年に1度の党大会を22年に控えており、判断の難しい時期となっている。
原題:China’s Nightmare Evergrande Scenario Is an Uncontrolled Crash(抜粋)
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著者:Shen Hong、Enda Curran、Sofia Horta e Costa
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