それまで縁のなかった東上線への移籍が決まったのは、「従来車の8000型置き換えと、同線へのATC(自動列車制御装置)の導入を見込んで」(川鍋さん)のことだった。同線へはまず10両が2011年1月に移籍。予想外ともいえる「異動」は鉄道ファンを驚かせた。
移籍した車両は、6両編成と4両編成を常時つないだ10両編成に改造。中間にはさまれた先頭車はヘッドライトや乗務員室の運転台機器などを取り外し、外観は先頭車の面影を残すものの機能的には中間車両と同じになった。
6両と4両に分割できる形をやめたのは、30000系を運用する東上線の池袋―小川町間は10両編成が基本であること、そして先頭に立つ車両はATC機器を搭載する必要があるため、使わない先頭車を改造するのは費用面で得策でないことが理由だ。
新天地でポテンシャルを発揮
東上線への移籍により、半蔵門線直通対応、6両と4両に分割できる構成という2つの「特技」を封印した30000系。だが、本領を発揮できるようになった部分もある。加速度の高さだ。
30000系は10両編成の場合、6両単体や10000系と連結した際よりも高い加速度で走ることができるという。「せっかくの性能を持っていながら10000系と同じように運用するため加速度が低くなっていたが、東上線で10両だと高加速度で走れる」(川鍋さん)。そのポテンシャルが新天地で生きることになった。
東上線への移籍はその後も進み、2021年9月末の最後の編成転属によって30000系は全編成150両が同線所属に。移籍時には10両編成化とともに運転台のマスコンなど機器類も更新しているといい、半蔵門線直通用として生まれた車両は、今やすっかり東上線仕様になった。ただ、検査などの際は日光線の南栗橋車両管区に入るため、「試運転や回送の時は本線にも顔を出しますよ」と川鍋さん。時には「里帰り」も見られるわけだ。
30000系の特徴について、車両部管理課の土屋翔大さんは「やはり、いろいろな運用で変化してきた車両というところですかね」。当初の見込みとは違う持ち場でもその力を発揮し、主力の一角を担っている30000系。予期せぬ異動に見舞われた人も、その活躍ぶりを見ればパワーが湧いてくるかもしれない。
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