新生銀へのTOBに踏み出したSBI北尾CEOの狙い

「第4のメガバンク」実現に向けの受け皿銀行に

SBIホールディングスが、新生銀行の株式公開買い付け(TOB)に踏み出した。成立すれば北尾吉孝社長の掲げる「第4のメガバンク構想」実現に向けて大きく前進する。迎え撃つ新生銀の次の一手に関心が高まっている。

SBIHDは、1999年の創業からの20年余で暗号資産からヘルスケアまで幅広い事業を展開する金融コングロマリットに成長した。残る宿願が銀行業への本格進出だ。

北尾氏は19年に「第4のメガバンク構想」を掲げ、10行近い地銀に次々出資した。ただ、完全なコントロール下においている銀行はない。最初に手掛けた島根銀行への出資は、ブルームバーグのデータによると合計で3割超。ネット専業の住信SBIネット銀行には、三井住友信託銀行と折半出資している。

北尾吉孝社長(3月)Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

新生銀のTOBでは、最大48%への出資比率引き上げを狙う。銀行持株会社としての厳しい規制の対象となる50%を超えずに、株主総会の議決権行使には十分な比率だ。SBIHDは9日の開示で、TOB成立後に臨時株主総会を開き、工藤英之社長らを解任する方針を示した。

北尾氏に近い関係者は、SBIHDとしてコントロール可能な銀行が必要で、最終的には出資している地銀の受け皿にするとの見方を示す。JPモルガン証券の銀行担当アナリスト、西原里江氏は9日付のリポートで「地銀再編も含め『第4のメガバンク構想』のプラットフォームとなることも展望される」と記した。

新生銀のノンバンク事業も魅力だ。その一つである消費者金融事業は、3月時点の無担保ローン残高が約4800億円。SBIHDには、クレジットカード会社を設立から数年で畳んだ苦い経験がある。ジェフリーズ証券の伴英康アナリストは「最大のメリットは、証券会社にとって欠けている部分である新生銀の消費者金融事業である」と分析した。

小が大を飲み込む買収に

SBIHDの総資産は約7兆円、対する新生銀行は約11兆円。TOBが成功すればグループの総資産は2倍以上に膨らむ。事業ポートフォリオに占める銀行業の割合も飛躍的に大きくなる。証券会社が大手行を傘下に収めるのも日本で初めてだ。

だが、SBIHDの手法に懸念を示す見方がないわけではない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の辻野菜摘シニアアナリストは、評価を一時停止する直前の9日付リポートで、SBIHDの事業展開について「新しい分野にすぐに参入するために、結果的にリスクを取ってしまうこともある」と指摘。

そのうえで「業界の中での足並みにとらわれない投資手法を実施することもあるため、誰もが同社のパートナーになることを望むわけではない」としている。

新生銀は17日開催の取締役会で、SBIHDによるTOBへの対応を討議する。前日には会見で、2019年にもSBIHDから資本・業務提携の申し入れがあり、提案にあった公的資金返済スキームが辞退の理由になっていたことなどを説明した。

同スキームでは、SBIHDによるTOBと合わせて新生銀が自社株買いで一般株主の割合を低下させ、最終的にSBIHDと国の保有が計90%の議決権となったところで一般株主から強制的に株式を買い取る「スクイーズアウト」を実施。その上で、国が保有する株式を買い戻して公的資金を返済することが提案されていた。

新生銀は、自社株買いをする際には将来的に国からより高い価格で買い取る計画を、事前に一般株主にも周知すべきだとして、同スキームは実現性が低いと判断したとした。

新生銀、SBI側の説明は「不正確」との認識表明-買収提案巡り (2)

SBIHDの広報担当者は、TOBを巡る問い合わせにコメントを控えるとした。

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著者:布施太郎、浦中大我

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